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同胞障害児家族らのネットワーク「ムジゲ(虹)会」が初の懇談会


 障害児を抱える同胞家族らのネットワーク「ムジゲ(虹)会」が初めて主催する懇談会「子供たちのミレ(未来)のために」が19日、東京・文京区で開かれ、会員と同胞ら30余人が参加。障害者と健常者が「共に生きる」同胞社会を作っていくために何ができるか話し合った。後援は在日本朝鮮人人権協会。関東を中心に30余家族が入会しているムジゲ会は95年秋の発足後、月1度の定例会、隔月ごとの会報を通じて、会員間の親ぼくを深めている。(東)

 

民族教育に思い強く

 自らも視覚障害者である花園大学の慎英弘助教授(社会福祉学専攻)の講演に続き、参加者による意見交換が行われた。

 障害児を抱える父母らから主に提起されたのは◇同胞社会での理解不足◇情報収集◇教育(学校)の問題◇就職、結婚の問題――など。そしてこうした問題を解決、改善していくためにもしっかりとしたネットワークを作り、広げていく必要性があると指摘された。

 同胞社会にも障害者への偏見は残っている。そのために悲しい思いをした体験を語る参加者は多かった。

 偏見は無知から生まれる。そのため、民族教育で障害者問題をきちんと教えることの重要性が話し合われた。さらに、生徒たちが福祉施設などにボランティアに行けば、福祉について学ぶ機会になると同時に日本社会での朝鮮学校への理解を広げる機会にもなる、という提案もあった。

 教育の問題も多く論議された。一般的に日本社会では、障害児を普通のクラスで一緒に学ばせる統合教育か、特別なクラスや学校、施設で学ばせる分離教育か――で議論がある。文部省は基本的に分離教育だが、欧米など障害者福祉の先進国では可能な限り統合教育というのが主流だ。

 障害があっても同じ朝鮮人。民族教育を受けさせたいという父母たちの思いは強く、この日、参加した会員の子供のうち、障害が軽度の子供たちの多くは朝鮮学校に通っている。結果的に「統合教育」となる朝鮮学校のいい部分を指摘する声がある一方で、「担任教員1人の負担が重過ぎる。学校として、組織としての取り組みがもっと欲しい」「善意で入れてあげているという態度が見え隠れする」などの声も聞かれた。

 

難しい情報収集

 医療、行政、学校…。障害児を育てるうえで、何より必要になるのが情報だ。情報収集の大切さと困難さを訴える声も多く、情報を収集し、発信できるネットワークの重要性が指摘された。ネットワークは、情報収集のみならずこの日の意見交換で指摘されたすべての問題を解決するために重要な役割を果たせる。

 例えば教育の問題でも、日本の学校の場合、障害児が入学すると教職員の加配など、行政の手厚い保護がある。朝鮮学校で障害児受け入れを図っていくためには、処遇改善を求める運動にこうした要求も加えていく必要があるが、1人では難しい。

 この日の懇談会のきっかけとなったのは、昨年11月に開かれた「同胞の生活と権利シンポジウム」だ。総聯が昨年5月の第18回全体大会で示した、障害者福祉をはじめ同胞の生活と権利を重視する方針に沿って開かれたシンポでは、「同胞社会と福祉」というテーマで慎助教授が報告。様々な問題提起をした。

 この話に感銘を受けたムジゲ会の申桃順会長(36)が、ぜひ会員らに話を聞かせたいと懇談会を企画。シンポ運営に携わった人権協会が慎助教授との仲を取り持つことになった。シンポで初めてムジゲ会を知ったという慎助教授も、この依頼を快く引き受けた。

 申会長は「友達づくりから始まったムジゲ会だが、同胞社会での反響の大きさに驚いている。会の意味、同胞社会での福祉問題の意味を改めて考え直す時期だと思って懇談会を企画した。同胞社会に理解を広げるためにも多くの同胞たちに私たちの存在を知ってほしいので、今日は本当にいい機会となった」と話していた。