時事・解説/故郷帰還強く求める元非転向長期囚
「3・1節特別赦免」に際してさる2月25日、17人の非転向長期囚が釈放された。北側は非転向長期囚である金仁瑞(74)、金永泰(69)、咸世煥(69)氏を速やかに家族のいる北に送還するとともに、釈放された非転向長期囚全員を家族のもとに送還するよう要求していた。しかし南の執権者は「軍捕虜」、「北に拉致された漁民」と交換されなければならないとの「相互主義」を掲げ、無条件では送還できないという立場を取っている。だが北では「軍捕虜」、「拉致漁民」はいないと明言している。非転向長期囚のその後の問題についてまとめた。(基)
対話の重要な契機に
「条件付きの北への送還には反対だ。あくまでも人道的次元で解決されることを願う」
元朝鮮人民軍兵士で世界最長の42年間投獄されていた禹ヨンガク氏(71)は釈放後、自らの送還問題についてこう語り、故郷に帰りたい気持ちを述べた。
この問題について朝鮮赤十字会の張在彦委員長は、金仁瑞、金永泰、咸世煥の3氏を1日も早く北側に送還させる措置を南当局が講じるとともに、非転向長期囚全員を家族のもとに帰し、「幅広い対話と接触の門を開くうえで重要な契機」(2月23日に送った「大韓赤十字社」総裁への書簡)を作ろうと言っている。
しかし南の執権者は3日に放映された「韓国放送公社」(KBS)との「特別対談」で、非転向長期囚の北への送還にあたっては、「軍捕虜」および「北に拉致された漁民」と交換されるべきだと主張し、「相互主義」を再び持ち出した。
これに対し労働新聞8日付は、北に南の人がいるとすれば、「南朝鮮社会から共和国に来て暮らす義挙入北者たちであり、彼らの中には南に帰るという人は1人もいない」、と南のいう「軍捕虜」、「北に拉致された漁民」の存在を否定。「(南側が)北へ直ちに帰るという非転向長期囚と、死んでも南には戻らないという義挙入北者を『交換』するというのは、無理強いの極致である」と主張した。
早く肉親のもとへ
非転向長期囚らは釈放後の2日、ソウルのキリスト教会館で記者会見し、北への無条件早期送還を口々に訴えた。
金ドンギ氏(68、34年間投獄)は、「鳥も南北を自由に行き来しているのに、人間は行き来できないのか」と言い、ホン・ミョンギ氏(71、38年間投獄)は「われわれは政治的な取り引き材料にはならないので、自由意思に沿って無条件で北に帰れることを願う」と語った。
また彼らは、自分たちは「順法誓約書」を書かずに釈放されたが、獄中には今も「順法誓約書」を書かなかったために投獄されている多くの良心囚が残っていると指摘。「良心囚の自由を侵害している順法誓約制度を撤廃し、彼ら全員を釈放すべきだと」と要求した。
彼ら17人の出身地は、南が12人で北は5人だが、南出身のほとんどが朝鮮戦争中に北で結婚し、夫人や子供などの肉親が北にいる。
すでに釈放された金仁瑞氏ら3人も北出身で、肉親も北で暮らしている。
民主化実践家族運動協議会は「彼らの家族がどこで暮らしているのかをまず確認して、連絡できるよう対策を講じるべきだ。そして第3国であれどこであれ、直接会えるようにした後、本人の意思に沿って北で暮らしたければ、そうさせるべきだ」と主張している。
人道的立場、本人の意思に基づき、1日も早く彼らを肉親のいる故郷に帰すことが南当局には求められている。