ここが知りたいQ&A/指紋押捺全廃など外登法が一部改定されるが
常時携帯、刑罰制度そのまま/人権侵害の本質変わらず
Q日本政府が、外国人登録法一部改定案を閣議決定したが。
A 主な内容は@指紋押捺制度の全廃A登録原票の開示制度新設B永住者らに求める20の登録事項のうち「職業」「勤務先などの名称・所在地」の2項目削除C永住者らの登録証の切り替え期間を「5年ごと」から「7年ごと」に延長D登録事項の変更を本人以外の親族が代理申請できるケースを認定、の5点だ。
しかし、総聯と在日同胞が一貫して廃止を求めてきた登録証の常時携帯・提示義務、刑罰制度は手付かずのまま。「朝鮮人取締法」としての治安立法的性格に変わりはない。
Q どこが治安立法的なのか。
A 同法により、すべての外国人は居住地の市町村役場に氏名、生年月日、性別、居住地などを登録。16歳以上には、登録事項、顔写真、署名入りの外国人登録証の常時携帯・提示、定期的な切り替え、登録事項に変更が生じた場合の変更登録申請が義務づけられる。違反したら、単純な過失でも最高で「1年以下の懲役もしくは禁固または20万円以下の罰金」の重い刑事罰が科される。
必然性のない繁雑な義務を設け、それに違反したら刑罰対象とする同法は、外国人の逮捕、拘束を容易にし、ひいては強制捜査権の発動まで可能にする。つまり外登法は、外国人を監視対象としてその動向をつねに掌握し、その人権を威嚇、弾圧、規制するための法律であり、その「柱」となっているのが、登録証の常時携帯義務と刑罰制度だ。この点が改善されない限り、外国人の人権を著しく侵害、抑圧する外登法の本質的性格に変わりない。
Q 「朝鮮人取締法」というのは。
A 外国人登録令として施行された1947年当時、在日外国人の93%が朝鮮人だった。現在も、適用対象の半数は同胞だ。
東京・小平警察署は96年まで、小平市が管理する登録原票を不当に定期的に閲覧していたが、同市には朝鮮大学校や金剛山歌劇団がある。90年には住所変更の申請が遅れただけの「容疑」で、機動隊を含む警官隊100余人が「容疑者」の勤務する東京朝鮮中高級学校を包囲、強制捜査した。登録証不携帯による同胞の逮捕、拘束の例も多い。外登法が狙う主なターゲットが在日同胞であることは明らかだ。
Q 一方で、今回の改定で改善される部分もあるのでは。
A 永住者・特別永住者(在日同胞のほとんどが該当)の指紋押捺制度は、前回の92年の改定ですでに廃止されている。他の改定内容も、同胞らの精神的、肉体的負担が大きく軽減されるものではない。
92年の改定時、国会で採択された付帯決議は「人権尊重」の方向で、「施行から5年経過後に速やかに適切な措置を講じる」とした。国連・規約人権委員会は93年と98年、外登法の常時携帯義務と刑罰制度は国際人権規約違反だとして同法の廃止を勧告した。日本国内でも抜本的改正を求める声は強い。
しかし、「朝鮮人取締法」としての治安立法的な性格は、そのまま温存する今回の改定案はこうした内外世論を無視するもの。人権尊重を求めた国会の付帯決議にも反している。登録証の常時携帯・提示義務と切り替え、刑罰制度をなくす抜本的改正が必要だ。