時事・解説/黄鉄で開発された酸素熱法による銑鉄生産方法
国産の無煙炭を効果利用/コークスは使わず外貨負担減らす
2月23日発朝鮮中央通信によると、共和国の大規模総合金属企業所の黄海製鉄連合企業所(黄鉄)でこのほど、コークスではなく無煙炭を使った酸素熱法による銑鉄生産方法を開発した。労働新聞2月18日付は、金日成主席が生前、酸素熱法による製鉄方法を完成させるために多くの精魂を傾けていたことや、金正日総書記がコークスを使用しないで銑鉄を生産すれば大きな問題が解決される、動揺せず酸素熱法による鉄生産を必ず成し遂げるよう語っていたことを明らかにした。現地では同月14日、新たに建設された酸素熱法溶鉱炉の操業式を行った。労働新聞、民主朝鮮などはこの方法に関する記事を掲載、人民生活全般を発展させるうえで重要な意義を持つと強調した。(基)
還元剤の役割
酸素熱法溶鉱炉に原料、副原料、燃料などを一定の比率で混ぜて装入し、酸素を吹き込んで鉱物を溶かす――黄鉄で開発された酸素熱法による銑鉄生産方法をざっと説明するとこうなる。
一般的に銑鉄をつくるには、鉄鉱石を溶かして鉄分を取り出す溶鉱炉に、原料である鉄鉱石だけでなく、コークスや石灰石、石炭などを一緒に入れなければならない。
原料となる鉄鉱石(鉄分と酸素が化合)には、鉄分が約60%含まれているのだが鉄分は酸素としっかり化合しているので、それを取り出すには酸素を除去(還元)する必要がある。そのための還元剤として使われているのがコークスだ。
ところが銑鉄生産法では、高カロリーの無煙炭を溶鉱炉に入れて温度を高めるとともに、熱風と酸素を吹き込む酸素熱法を組み合わせて溶鉄の酸化を促進させることで、コークスに変わる還元剤の役割を果たしたと言える。
廃棄物をそのまま装入
銑鉄生産法には、どのような利点があるのか。
まず輸入に頼っていたコークスを使用せず、国内の原料、燃料でまかなえる。共和国にはコークスがないため、主にソ連とのバーター貿易でコークスを確保していたが、ソ連崩壊後はすべて現金決済となった。コークスを使わずに済むということは、その分の外貨を使わなくても済むということだ。
またコークスを使用しないため、溶鉱炉装入前に必要だった原料の事前処理、つまり良質の石炭を蒸し焼きにしてコークス炉でコークスをつくることと、粉状の鉄鉱石を焼き固めて塊状の焼結鉱にする工程が省略され、設備コスト、エネルギーコストを削減できる。事前処理過程で発生する排ガスによる大気汚染をなくすこともできる。
さらに酸素熱法溶鉱炉には一定の大きさの原料をそのまま装入することができるので、冶金工場や機械工場から出る廃棄物を効果的に利用できる。
黄鉄では今後、この成果を生かして物質技術的土台をいっそう強化し、生産工程を現代化させ、より多くの鉄鉱材を生産していく予定だ。
黄海製鉄連合企業所
黄海北道松林市に位置する黄海製鉄所と、同所に原料を送っている周辺の各鉱山と鉱石を運搬する海運事業所、地質探査所など、各種工場、企業所を連合して1973年12月、黄海製鉄連合企業所となった。銑鉄生産から鋼鉄、圧延鋼材生産に至る鉄鉱材生産すべての工程を整えた総合的な企業所。共和国西海岸一帯の鉄鉱石、平安南道北部炭田の無煙炭、道内の鉄鉱石と耐火料粘などの原料、燃料を利用して鉄鉱材を生産し、機械工業をはじめ経済各部門と建設現場に送っている。
ミニ知識
鉄は、粉状の鉄鉱石を焼き固めて塊状の焼結鉱にし、銑鉄をつくる製銑、銑鉄から鋼をつくる製鋼、鋼から鋼材をつくる圧延、鋼材にメッキなどを行う表面処理工程などを経て商品化される。
溶鉱炉で銑鉄を1トンつくるには、鉄鉱石(259キログラム)、焼結鉱(1246キログラム)の他に鉄源(1キログラム)、マンガン鉱石(1キログラム)、コークス(431キログラム)、石炭(80キログラム)、石灰石(2キログラム)などの原料、燃料が必要で、その際の消費電力は63.4キロワット/時。