東京で国連の人種差別撤廃条約を考える第2回・第3回勉強会
国連の人種差別撤廃条約勉強会(主催=朝鮮人強制連行真相調査団・朝鮮人側)の第2回目(2月27日=「人種差別撤廃条約委員会での国別審査経過から」=前田朗・東京造形大助教授))と、第3回目(6日=「人種差別撤廃条約とマイノリティの権利」=武者小路公秀・フェリス女学院大学教授)がそれぞれ東京・台東区の同胞法律・生活センターで行われた。勉強会は、昨年8月の共和国の人工衛星打ち上げ以降頻発した在日朝鮮人への人権侵害事件を国際的な視点でともに考えようという趣旨で企画された。
勉強会は、1995年に人種差別撤廃条約を批准した日本政府の同条約実施状況に対する初の審査が8月に予定されていることから、2月から3回に分けて開かれていたもの。
条約締約国は、効力発生後1年以内に最初の報告書を提出することになっている。日本政府報告書は3月中には提出の予定だが、昨年6月の国連の「子どもの権利条約」、11月の「市民的政治的権利に関する国際規約」の各委員会に提出された政府報告書は在日朝鮮人差別の問題が巧妙に隠ぺいされていた。今回も、日本政府報告書が日本における在日朝鮮人差別の実態を正確に報告することはあまり期待できない。
審査ではNGOの意見も重視されるため総聯代表は政府報告書に記述されない問題についてカウンターレポートを提出したり、ロビーイングを行う。
こうした点を踏まえ、勉強会では審査に向けての対策と、同条約に準じた国内法の整備の必要性などについて論議が交わされた。
同条約では、公的機関が人種差別を助長または扇動することを認めないことを規定している(4条c項)。さらに、5条では、すべての者の権利を保障し、暴力または傷害に対する身体の安全を国家が保護することを約束している。
つまり、日本政府には、朝鮮学校生徒への一連の人権侵害事件に対し、立法措置による効果的な措置を取る義務がある。
しかし、元最高裁判事の差別表現に見られるように、日本では条約の精神が十分に反映されておらず、条約に準じて法を整備していく姿勢がまだまだ見られない。
勉強会では、人種差別助長・扇動行為を刑事規制の対象としているスウェーデンやノルウェーなどの憲法を取り上げながら、「日本の人権擁護制度の現状には問題がある」「チマ・チョゴリを保護する法の制定が必要だ」などの活発な意見が出された。
昨年11月には、同委員会のテオ・ファン・ボーベン氏が大阪第4初級を国連関係者として初めて訪問し、「朝鮮学校への差別は明らかに人種差別に当たる。日本政府には国連の場で是正を求めたい」と語った。
自らの権利を勝ち取るためには、こうした積極的なアプローチとともに、日本のNGO団体をはじめ広範な日本市民との連携も重要だと強調された。
人種差別撤廃条約
正式には「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」。1965年の国連第20総会で採択された。締約国は98年12月末現在で152ヵ国。全25条。
同条約では人種差別について、「人種、皮膚の色、門地または民族もしくは種族的出身に基づくあらゆる区別、除外、制約または優先」と定義している。
同条約成立の直接の契機は、1959〜60年にかけて、ヨーロッパを中心にしたネオ・ナチの動きを警戒し、国連総会が63年に人種差別撤廃宣言を採択したことにさかのぼる。同条約はそれを受けて、2年後に採択されたもの。
締約国は差別を撤廃するため、「すべての適当な方法(状況により必要とされる時は、立法を含む)により、いかなる個人、集団または団体による人種差別をも禁止し、終了させる」(第2条)ことが義務付けられている。
つまり同条約は、国家による人種差別はもちろん、社会における差別をなくすことも国家の責務としている。
人種差別撤廃条約委員会は、締約国の選挙により4年間任期で選出され、18人の専門家集団で構成されている。締約国が提出を義務づけられている報告書(初回は批准の1年後、次回からは2年ごと)を審議し、勧告を行い、総会に報告する権限が与えられている。