sinboj_hedline.gif (1986 バイト)

科協神奈川、横浜初級で特別授業「科学の話・半導体の魔術」


 横浜朝鮮初級学校で2月27日、高学年の生徒らを対象に、在日本朝鮮人科学技術協会(科協)神奈川支部の会員が「科学の話・半導体の魔術」と題した「特別授業」を行った。先端科学に触れる場を設けることで、生徒らの将来の夢を広げられればと、同支部が学校に協力を申し出たもの。同支部では、今後も県下の各朝鮮学校と協力しながら、こうした試みを計画的に行っていきたいとしている。(賢)

 生徒が手にしたライトの明りを装置にかざすと、センサーが反応してブザーが鳴る。別の装置にレーザーの光を照射すると、電灯が発光。また、人間の目には見えないリモコン送光部の光が、ビデオカメラを通すとはっきり見えた――。光が当たると、その強さに応じた量の電子が発生する半導体の特性を応用したセンサー、「電子の目」の実験が次々に成功すると、生徒たちからは大きな拍手や歓声が起きた。

 原理の説明では難しい部分もあったが、簡単な実験を交えた「授業」は十分に生徒らの関心をとらえていた。終了間際に手を挙げて質問するなど、興味深々の様子だった崔英鮮君(4年)は、「科学は大好き。今日は図書室の図鑑に書いていることより、面白いことが分かって嬉しい」と話した。

   ◇   ◇    
 「今から難しい原理を覚える必要は別にない。気軽に触れる機会をつくることで、子供らの好奇心を持続させられればいい」

 同校の卒業生で、この日の講師を務めた科協神奈川支部の崔一○会長(43、東海大学助教授。○は火へんに英)はこう語る。

 世界有数の「科学技術立国」として知られる日本だが、80年代後半あたりから若者の理工系離れが顕著となり、将来を危惧する声が上がりはじめた。横浜初級の父母の1人であり、朝鮮大学校でも講義を受け持つ崔会長は、「朝鮮学校の生徒も例外ではない」と指摘する。

 「科学離れ」の要因としては、科学技術があまりにも急速に発展し、またあまりにも当然なものとして普及したために、普通の人々が関心を持ちにくくなったことなどが考えられている。しかし子供らの知的好奇心を育もうにも、日進月歩の発展についていくのは、学校教員らにとっても至難の業だ。

 同支部ではこうした現実を受けて、かねてからあった教育支援のアイデアを、昨年末に方針としてまとめた。会員のベンチャー企業経営者、博士、建築士らが講師となり、生徒だけでなく教員、同胞も対象に含め、計画的に講義を行っていこうというものだ。

   ◇   ◇    

 横浜初級では以前にも、オモニ会などの発案により、科学や芸術、文学などに詳しい地域同胞の協力を受けて、しばしばこうした「授業」が行われてきた。

 学校側では、「科学や文学、芸術、スポーツと、子供らもそれぞれ、関心を示すものが異なる。幼い時から色々なものに触れておくことは、子供たちにとって重要なこと」(金学用教務主任)と、歓迎している。

 科協神奈川支部の教育支援も、科学技術振興というよりは、民族教育の充実が目的だ。「大学受験などの権利面では、進路の幅は昔に比べてかなり広くなった。これからは生徒らが将来の夢を描くうえで、より幅広い選択ができるよう環境を整えて行くべき」(崔会長)との考え方だ。

 同支部では、要望があれば他地域の学校にも協力したいと意欲を見せている。

 

 半導体 金属など電流が流れやすい物質と、ガラスなどの絶縁体との中間に位置する物質。ゲルマニウムやシリコンなどがこれに当たり、コンピューターのメモリーやマイクロプロセッサ・ユニット(MPU)の素材に使われる。電流を流すと強い光を放射する特性を応用した半導体レーザーも、コンパクトディスクの信号読み出しや光通信の光源として実用化されている。