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最後まで圧倒のマジック/「2月の芸術の夕べ」


 今年で16回目を迎えた「2月の芸術の夕べ」は、ここ数年の「歌謡曲路線」とは違い、イリュージョンで観客を魅了。朝・日親善の輪を広げた。(琴)

 

 黄色い布を白い鳩に、檻の中の鳩を白い衣装を着た女性に変えたり、空の箱の中から次々と色鮮やかなチマ・チョゴリを取り出す同胞マジシャンの安聖友さん。スピーディーな展開は観客をあっと驚かせた。とくに、舞台にいたはずの安さんが突然観客席に現れた時には、場内から黄色い歓声が上がった。

 また安さんは、東京朝鮮第1初中級学校初級部6年の金祐智君を客席から舞台に招き、四角い箱の中へ。

  その箱に次々と突き刺されていく8本の剣に思わず息を飲む会場。やがて剣が1本ずつ抜かれ、中から花を持った祐智君が無事登場。「(仕掛けは)2人だけの秘密だよ」の言葉に、会場は笑いの渦に包まれた。

 「21世紀に向けて朝・日親善の春が少しでも早く来て欲しいとの願いを込めて最後のイリュージョンを披露します」
 水を打ったように静まり返る中、白いチマ・チョゴリを着た女性の体が少しずつ宙に浮いていく。さらに、銀色の紙吹雪とともに、3人の女性の衣装が早変わり。ショーが終わった瞬間、会場からは割れんばかりの拍手が送られた。

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 続いて、世界的マジシャン引田天功さんが、華麗に登場した。「アンニョンハセヨ、チョヌン引田天功イムニダ」のあいさつとともに、「セクトンチョゴリ」を見事な朝鮮語で歌い上げた。「共和国では私のマジックよりこちらの方が盛り上がりました」。引田さんのウィットに富んだトークが爆笑を誘う。

 続いて、舞台の中央に設置された箱の中に入る引田さん。それを2人の男がどんどん折り畳む。小さな正方形と化した箱に3本の剣が次々と突き刺さると、盛り上がりは最高潮に達した。やがて元の大きさに戻った箱から、美しい衣装に変身した引田さんが登場。観客から惜しみない拍手が送られた。

 また、舞台に、中が透けて見えるピラミッドが登場。やがて華麗な衣装に身を包んだ引田さんが暗闇の中から浮かび上がると、観客からはため息が漏れた。

 それ以外にも、ダンスを織り混ぜながらの優雅で艶やかなステージは、観客を引き込んだ。

 最後は出演者全員ステージに登場し、朝・日親善の歌「愛の絆」を合唱。公演は拍手喝采の中で幕を閉じた。

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 公演後、引田天功さんは「日朝親善のために何か出来ることはないかとの思いから出演を引き受けた。こうした小さな積み重ねが重要だと思う」と話していた。

 また、安聖友さんは「朝・日友好への思いを込め、ステージに臨んだ。公演が進むにつれ、朝・日親善を願う思いが一つになっていくのを肌で感じた。熱い拍手を送っていただき、とても嬉しく思う」と満足気に語っていた。

 今年初めて「夕べ」に訪れたという金玉子さん(66、八王子市在住)は「安聖友さんが舞台から突然私たちの目の前に現れた時はびっくりした。とても素晴らしい公演だった。来年の『夕べ』が今から楽しみ」と語っていた。

 丁野由美さん(32、横浜市在住)は「最初から最後まで圧倒されっぱなしだった。オープニングの朝鮮舞踊もとても良かった。日朝の間には、解決しなければならない問題が山積している。公演を通して少しずつでも互いを理解し合おうという一体感が感じられた」と話していた。