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地下施設問題を巡る朝米協議第3ラウンド


 ジュネーブでの第4回4者会談(1月18日〜22日)をはさんで共和国の地下施設問題(平安北道・金倉里)を巡る朝米間の協議が開かれた。これは昨年11月(平壌)と12月(ニューヨークとワシントン)に続く第3ラウンド。協議は1月16、17日と23、24日の予定だったが、4者会談中も水面下で続き、実質的には16日から25日まで10日間続いた。共和国は金桂寛外務次官が、米国はカートマン朝鮮半島和平担当大使がそれぞれ出席。協議内容を検証し、今後を展望する。(載)

 

合意文には査察規定なし

 「地下核施設」疑惑は昨年8月から米国によって提起された。これまでの米国の主張は@「地下核施設」疑惑があるAこれは朝米基本合意文に違反するB「査察」を受け入れなければ合意文を破棄するC疑惑施設への「軍事的措置」も辞さない、などというもの。このため朝鮮半島の緊張激化の新たな要因になっていた。

 しかし共和国は、@核施設ではない(地下施設は全国にある)A合意文には「査察」の取り決めはなく、合意文違反ではないB「査察」要求は自主権の侵害である。朝米は法的に戦争状態にあり、査察要求は共和国を武装解除しようとするものだ、と反論していた。

 今回の協議に先立ち共和国外務省スポークスマンは1月11日、「地下核施設」疑惑は共和国への冒とくであると否定しながら、朝米関係を考慮して冒とくに対する補償として3億ドルを提供するか、ほかの適切な形でこれに相応する経済的恩恵が与えられれば特例として1度だけ金倉里の対象への訪問を許可すると主張していた。また戦争状態にある敵対国の米国に、国家保安上極めてデリケートな対象を1度開放すれば、二度と本来の目的には使えなくなり、補償要求は正当であると強調した。

 

細部を詰める交渉踏み込む

 協議中は双方とも公式発表はしなかった。一連の報道をまとめると、共和国は「米国が指摘する核疑惑を解明することができる」とし、@われわれは合意文を守り、いかなる核活動もしていないA地下施設への立ち入りを認めるが、補償を要求する権利があるB米国が補償できないなら、ほかの方式で政治、経済的恩恵を与えるべきだと主張した。

 米国は「複数回数の現場査察」を求め、また食糧支援や経済制裁の緩和など何らかの「政治、経済的恩恵」を考慮することを示唆したもようだ。

 つまり疑惑対象に対する「訪問・査察」について、共和国は「特例として金倉里に1回だけ」の「訪問」としているが、米国は「複数回」の「査察」を要求した。

 また「補償あるいは政治、経済的恩恵」について、共和国は3億ドルか、それに相当する「大規模食糧支援」(100万トンとの報道も)を要求し、米国は「補償要求」は拒否しつつも、「見返り」として食糧支援(40万トン)と経済制裁の一部解除(スポーツなど人的交流の拡大、米市民が訪朝した際のクレジットカードの使用制限撤廃など)を検討していると言う。

 協議後、米交渉団の1人は「焦点は、疑惑そのものではなく、疑惑解消の手段だ」と述べ、査察方法や見返りの具体的内容など、細部を詰める交渉まで踏み込んだことを示唆した(読売新聞1月26日付)。

 

第4ラウンドは今月にニューヨークで

 共和国外務省スポークスマンは1月28日、朝米協議と関連し朝鮮中央通信社記者の質問に次のように答えた。

 「地下核施設疑惑」を解明する問題が主に論議された。今回、米国が「地下核施設疑惑」と合意文を別問題と認め、重油納入と軽水炉建設工事を早めることを保証したのは幸いなことだ。「疑惑」解明の特例性を認め、それに応じてわれわれの補償要求を肯定的に考慮しようとしていることを示唆したのも、意味ある進展と見れる。米国が3億ドルか、これに見合う補償をし協力的に問題を解決するなら、特別に1度だけ金倉里への訪問を許可するという解決方途も考慮できる。

 ピカリング国務省次官は1月27日、訪米した町村外務政務次官との会談で朝米協議第4ラウンドが2月に行われると明らかにした。場所はニューヨークの予定。

 「地下核施設疑惑」は第4ラウンドで「決着の見通し」との指摘もあるが、朝米間の「戦争状態」が続く限り「地下施設」を巡る綱引きは続くだろう。

 結局は共和国が常に主張しているように、朝米間の敵対関係を解消(朝鮮停戦協定を朝米平和協定に代える)し、朝米関係の正常化(国交樹立)が実現しない限り根本的解決にはならない。