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朝鮮語の話者・学習人口/日本での傾向


 朝鮮語を話す人は、世界各国または日本にどれくらいいるのだろうか。各種資料から、話者人口と学習の傾向を探って見た。

 

学生らの関心増す/約200大学に講座

世界では16位

 言語学に関する各種辞典では、朝鮮語の話者人口について、まず南北朝鮮の人口を挙げ、次に中国、米国、日本、旧ソ連諸国にいる朝鮮民族の人口に言及している。しかし、在外朝鮮人の中には朝鮮語を話せない2、3世が多数おり、その実態が把握できないため、はっきりした結論は述べていない。

 その代わりに、「とにかく、6000万人以上の話者をもち、世界でも有力な言語の一つ」(言語学大辞典・三省堂)と指摘。世界のことば小辞典(大修館書店)では、世界に3500ほどあると言われる言語の中で、イタリア語に次いで16位にランクされている。

 一方、日本ではどうだろうか。

 在日同胞で朝鮮語を話す人は、1世と朝鮮学校出身者を中心に、約17万人と見積もられている。だが、日本人の学習人口については、文部省もおおよその数字すらつかんでいない。

 各種データの中で、最も大きな数字を示しているのは、NHKテレビ、ラジオの「アンニョンハシムニカ・ハングル講座」のテキストの出版部数。ともにおよそ8万部(公称)で、NHK出版協会が発行している8ヵ国語のテキストの中では、ロシア語に次いで少ない。ちなみに、最も多いのは「ラジオ基礎英語」で、公称70万部だ。

 教養課程などで朝鮮語を教えている大学の数は、急速に増えている。文部省大学課によると、1995年に143校だったのが、97年には192校。その後も増える傾向にあり、現在では200校を超えていると思われる。

 ただし、東京外国語大学の三枝寿勝教授(朝鮮語)は、「これらの数字だけで日本での朝鮮語学習の傾向をつかめるかは疑問。NHK講座は趣味の範囲で聞いている人も多いし、公称の八万部は多すぎる感じ。大学では単位の関係で朝鮮語を選択する学生もかなり多い」と指摘する。

 

資格としての価値

 学習人口の概要まではつかめないが、どのような人が学んでいるかを知るうえで参考になりそうなのは、93年から行われているハングル能力検定試験だ。

 応募者数は、98年までの11回の試験で、約1万8700人と、堅実な成果を上げている。

 一年毎の内訳を見ると、2500人から3600人の間で増減を繰り返している。興味深いのは、当初は社会人が大部分だったのが、最近になって学生が急増していることだ。98年の試験では、全体の約38%を占めた。

 試験を行っている検定協会の事務局は、「就職も困難な時代になり、資格としての価値が認められてきたのではないか」と分析する。だが一方で、通訳試験の受験者は減る傾向にあり、「資格」だけではとらえられない側面もある。

 昨年6月、同協会が主催した第1回「ハングル」スピーチコンテストには、検定試験の1、2級合格者ら10人が出場。同胞参加者は共通して、民族のアイデンティティを守る大切さを強調し、日本人参加者は、ことばを学びながら朝鮮の文化・情緒にまで理解を深めたい、と話した。

 三枝教授は、「ある言語に関心が向かうかどうかは、その国の文化への関心の問題でもある。その意味で、日本における朝鮮文化への関心は、隣国でありながらまだまだ低い」と話す。今後の朝鮮語の学習人口も、朝・日の文化的つながりに左右されるのではないだろうか。