劇団アラン・サムセ公演「メイク・アップ」


「朝鮮人としてのプライドを持って」

 民族という鏡の前でメイク・アップを――。

 そんなメッセージが込められた劇団アラン・サムセの今年度公演「メイク・アップ」(作・金元培、演出・金正浩)が、10、13、14日に東京のアミューたちかわ、渋谷ジァンジァンで上演され、450人が観覧した。

 ナオコという有名歌手の失踪事件を題材にした作品は、出演者たちと、それを取り巻く社会環境との葛藤を通して、在日同胞文化の現住所を見つけ、その未来像はどうあるべきかを問題提起していた。

 物語は、同胞劇団の稽古場にナオコが現われたことから展開した。

 5歳の時とデビュー前に劇団の公演を見たナオコは、1つの答えを得ようとここを訪れた。本名を隠しながら歌をうたう自己が、1人の人間としてではなく、商品として扱われていることに悩むナオコ(姜尚姫さん)。

 ナオコのマネージャー、ペー・ウォン(金元培さん)と劇団のミユ(姜由美さん)は、同胞の中ではなく、日本の社会で実力を認められることのみに重点を置く。ナオコを取り巻いて、段々と歯車が合わなくなる劇団員たち…。

 出演者たちは、パフォーマンスを繰り出しながら、在日同胞社会の位置を確認しあう。

 クライマックスは、ペーウォンがナオコではなく「サンジャ」としてメイクをし、ナオコも自分を偽らず、堂々と本名で歌をうたっていくことを誓う。

 「朝鮮人としてプライドをもって生きることの大切さを学んだ」(具勇鶴さん、23歳)

 「題名の選択が大変良かった。劇の中で、アジュマが『やりたい事があっても出来ない人がいるのよ』という言葉に胸が打たれた」(金愛香さん、21歳)

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 同劇団では、98年度公演の台本「バンテージ」を販売している。台本は、日本の学校でボクシングをしていた同胞青年が朝鮮人として目覚める過程を描いたものだ。問い合わせ=同劇団、TEL  090・267・18401