環境の世界へ(下)


進む発注の規準化/着実に浸透、市場ルールに

― 存在価値

 東京都内と近郊に居食屋「和民」、レストラン「和み亭」を134店舗展開するワタミフードサービス(渡邉美樹社長)は今年7月、外食産業では他社に先駆けて、環境マネジメントの国際規格ISO14001認証(注)を取得した。

 新感覚の経営スタイルから、外食産業の有望株として注目されている同社だが、環境への配慮も特徴の1つだ。担当の鰐部慎二社長室長は、「人々に安らぎの場を提供するという経営目的から言って、環境保全は会社の存在価値にもつながる」と説明する。

 取り組みの内容は、電気・水・洗剤の節約、ゴミなどの削減が柱だ。

 例えば、照明をともす数を時間帯によって変え、従業員が分かりやすいようにスイッチを色分けする。冷凍食材の流水解凍をやめて自然解凍にし、洗剤の希釈量を測りやすい容器を取り入れて無駄をなくす||と言った具合だ。

― 将来見据え

 同社が環境マネジメントシステム構築と認証取得に要した費用は2500万円。節電・節水などによるコスト削減効果が今年度で6100万円、221店舗に拡大する予定の2001年度には1億8000万になる見込みで、割に合う投資と言える。

 もちろん、費用やコスト削減効果は、会社の規模や業種によって違ってくる。認証の審査・登録だけでも数100万円はかかるだけに、不況の中で二の足を踏む企業も少なくないようだ。

 それでも、「環境対策は目先のコストの問題ではない」と、株式会社柳建設(本社=神戸市)の柳京鉉社長は指摘する。

 同社は、土木工事、生コン製造・販売、建築資材の販売などを手掛けるが、1昨年からはアスファルト・コンクリート塊のリサイクルプラント(月産1万トン)も操業している。

 資金調達や行政の許可取得など、構想から操業まで数年かかったが、建設省が廃棄物のリサイクル目標を引き上げるなかで、現在では市の指定業者として優先的に仕事を受注している。

 柳社長は、「リサイクルなどの環境対策はもはや時代の要請。ISO14001もできるだけ早く取りたい」と話す。

― ノウハウ開示

 「環境保全は下請けレベルの企業も取り組んでいる。孫請けに広がるのも時間の問題でしょう」

 「環境倒産」(インプット参照)などの著作がある日本総合研究所・創発戦略センターの井熊均副所長によれば、環境負荷に配慮した購入運動の広がりもあって、電機産業をはじめとする製造業では、メーカー各社が競うように環境対策を強化。それに従って、下請け企業も対応を急いでいる。これは建設業も同様だ。

 今や「環境」は、市場のルールになった観さえある。消費者の環境意識の高まりは、小売りやサービス業にも圧力を加えそうだ。

 当然、小規模や零細の業者にも波は及ぶ。コスト負担を減らすには、「業者間のネットワークを活用すべき。例えばパチンコ台なども、リサイクルしやすい設計のものを皆でメーカーに求めることで、廃棄処理のコストを軽減できるかもしれません」(井熊氏)。

 ワタミフードサービスは、生ゴミの再利用義務化など将来の規制をにらみ、同業他社とリサイクルプラザをつくる構想を練る一方、環境保全のノウハウを積極的に開示している。

 「環境」は、経済に着実に浸透している。当面はコスト負担の余裕がないという企業も、将来を見据えて対応を模索する必要がありそうだ。                                     (金賢記者)

 注  ISO14001
    国際標準化機構が定めている環境関連規格の1つ。生産・サービス・経営において環境保全対策の   「立案―運用―点検―見直し(継続的改善)」といった管理・監査システムが整備されているかについて   認証機関の審査を受け、取得する。環境保全に対する姿勢を客観的に表す一定の目安になるとして、   取得を目指す企業や自治体が増えている。