同胞による同胞のための福祉施設を/神戸市在住の朴且介さん(1級身体障害者)
兵庫県神戸市に住む朴且介さん(50)は1級身体障害者である。十数年前の事故で首から下の感覚がまったくない。その彼には大きな夢がある。同胞による同胞のための福祉施設を作ることだ。そのためにまず、在日の福祉ネットワーク作りから始めたいと話す。朴さんに熱い夢の話を語ってもらった。
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年に数回、重度障害者施設に入る。ショートステイで1週間から10日、ロングステイで20日から1ヵ月ほどだ。だが、基本的には日本人による日本人のための施設なので限界がある。
例えば食事。朝、昼、晩とも和食が出ると、やはりキムチや朝鮮のおかずが恋しくなる。
施設の側が栄養のバランスを考えていることはわかるが、老人や身体の不自由な人間は、せめて食べ物ぐらい自分の好きな物を食べたいと思うのが人情だ。
言葉もそうだ。私たちのような2、3世ならまだしも、1世のお年寄りは言葉が通じなければ、だんだん話さなくなってしまう。
お年寄りにとって、自分の言葉がスムーズに通じ、朝鮮のおかずが思いっ切り食べられる施設があればどんなによいだろう。
もしかしたら、痴呆が始まったお年寄りでも、朝鮮語で話しかけ続ければ、言葉を話し始めるかもしれない。朝鮮の民謡を流し続ければ、オッケチュム(踊り)を始めるかもしれない。
朝鮮学校の子供たちがそこへ行き、民族の歌や踊りで激励すれば、お年寄りたちはもっと喜ぶのではないか。つまり、故郷に近い環境を作ってあげることだ。
そのためにも、同胞による同胞のための施設を早く作るのが夢だ。
機会があればぜひ1度、重度障害者施設をのぞいてみてほしい。世の中にはこういう障害を持った人たちがいて、みな頑張っているんだとか、何か気がつくことがあるはずだ。そこから在日の福祉のネットワークも広がっていくのではないか。 (談)