当世外食事情/押野見喜八郎氏講演


お客の完成/女性のセンスつかめてますか 

 外食市場は女性がリードしていると言っても過言でない。キャスティングボートを握ってます。

 昔は外食市場というのは男性対応でした。ところがどうです。女性が社会進出してきた。女性のし好をうまくつかめないと、お客を逃がしてしまいます。

 今、例えば居酒屋なんか半分以上が女性客というお店があります。そういう居酒屋と、男性ばかりのお店を比べて見て下さい。メニューの内容に、どういう風な違いがあるか。

 女性はそういう場でも食べることが主です。だからフードメニューが充実してます。

 男性が行く店の多くは、料理の幅も狭いし、決まり切ったものしかない。でもいいんです。男性は酒を飲むのが目的なんだから。

 だから適当に飲んで誰かが「もう帰ろうよ」なんて言っても、「俺まだ酔ってないよ」なんてね。そういう人に限って酔ってるんですがね。

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 男と女が求めるものは違う。でも、今は女性に喜んでいただくために、どうすべきかということを、もっと真剣に考えるべきです。

 だって、財布握ってるのは女性ですから。サラリーマン家庭の場合はほとんどそうだと思いますよ。外食に行くか行かないかも、奥さんが決めるケースが圧倒的に多い。

 例えば、だんなが「俺は焼肉行きたいんだけどな」って言った場合でも、奥さんが「それならあすこのお店がいいわ」っていう風に選ぶという具合です。

 選ばれる要素は品揃えだけじゃありません。焼肉屋さんなら、ケジャン(ワタリガニのヤンニョム漬け)を挟みで丁寧に切って持って行く。これは非常に食べやすい。とくに女性に喜ばれる。そういう細かい心遣いも必要です。

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 女性特有の感性というものも、考えて欲しい。感性にフィットする商品でなければだめなんです。

 こんなお話があります。

 私がお手伝いしているあるファミリーレストランチェーンは、メニュー改定の際には色々と調査します。ある時、ランチメニューを競合各社と比較しようと、自社のものも含めて10社分くらい用意しました。

 それで、「普段ファミリーレストランをよく利用する」という25五歳から35歳までの女性にお集まりいただいて、食べた感想をうかがいました。
 まず、食べたい料理はどれかと聞いた。そうしましたら、見事にバラバラにいろんなものを指摘する。し好の多様化ということが言われてるんですから、当たり前です。

 ところが、食べたくないと思うものは、見事に1つのメニューが指摘されました。「ハンバーグカレー」です。どうということのない、お皿に盛った御飯の上にハンバーグが乗り、カレーがかかってる。どいうわけかその上にトマトが2切れ乗ってました。

 なかには、「気持ち悪い」とまで言う人もいました。これはただごとじゃないと思いまして、気持ち悪いとはどういう理由か聞きました。答は、「温かいものの上に冷たいトマトが乗ってるなんて、きっと生ぬるくなってる。絶対食べたくない」。厳しい言い方です。

 さらに聞きましたら、カレーもハンバーグも、全員が好きだって言うんです。ハンバーグカレーそのものじゃない、見た目が悪いということなんです。

 やっかいな話じゃありませんか。うまけりゃいい、というわけには行かない。この辺に男性との違いを感じます。感性に訴える付加価値で、売れ方が決まるんですね。 (文責編集部)