春夏秋冬
ユダヤ人金貸しのシャイロックは、金を返せなかったアントーニオから、証文どおり胸の肉を切り取ろうとする。しかし男装して裁判官になりすましたポーシャの機転でシャイロックは敗訴する。シェークスピア(1564〜1616)の喜劇「ベニスの商人」の一幕だ
▼十字軍の遠征などによってユダヤ教徒は、キリスト殺しの民として迫害を受ける。そして1179年と1215年のラテラノ公会議(キリスト教会における教職者の会議。教義と教会規則に関する諸事項を審議決定)で、ユダヤ教徒のゲットー(ユダヤ人居住地域)への隔離などが決められた。以来、ユダヤ人は、キリスト教社会で貿易、農耕などの生業から排除され金融などに携わざる得をなくなった
▼シェークスピアが、この作品を書いた頃、ユダヤ人=金貸し=せん民という図式があったのだろう。それから4世紀、金貸しは金融と名を変え、世界を左右するまでに至った
▼異国に住むことを強制された在日同胞は、祖国解放後も、差別と迫害の中で暮らさざるを得ず、安定した職業は、望むべくもなかった。その中ではぐくみ、育ててきたのが、焼き肉とパチンコ産業である
▼こんにち焼き肉は日本社会でも高級料理として受け入れられ、パチンコは人々のストレスを解消するレジャーとして定着している。同時にパチンコ業界が、いまだに風俗営業関係法の規制を受けているのも事実だ
▼別にユダヤ人をひいきしているわけではない。ただ彼らが21世紀ではなく、22世紀に向けて、すでに行動を起こしているという事実は知っておくべきだろう。 (元)