村山訪朝団に聞く/環境作りで各党一致
【平壌4日発=金志永記者】日本政党代表団の帰国に先立ち、村山富市団長に、今回の訪問の意義と朝鮮労働党代表団との会談内容などについて聞いた。
実を結んだ後にもう一度訪れたい
――この間、日本では「北朝鮮脅威論」が世論を席巻して社会の動向に好ましくない影響を与え、在日朝鮮人が生活を脅かされるケースさえ見られた。
私たちはそういう環境を変える転機にしようと、平壌を訪れた。無論、日本には「北朝鮮脅威論」が根深い。しかし双方が誠意を持って、根気良く対話を続けるならば、必ず解決されると思う。日朝間の対話が正しく進められてこなかったことから、様々な疑惑と不信が生まれた。今後、政府間対話がうまく行けば、そういう現状も徐々に解消されて行くはずだ。
――会談では朝鮮側から「朝鮮のミサイルに脅威を感じるのは、日本が朝鮮を敵視しているからだ」との指摘があった。
理屈だけを言えばそうなる。いずれにせよ、両国が今のような不正常な関係にあるために、人々がそう受け止めるのだろう。不信が解消され、人々が互いに信頼できる関係が築かれれば、そういう脅威は感じないものだ。会談でも話題に上ったように、互いの関係が良ければ共同で宇宙開発もできるだろう。私たちはそういう環境をつくって行かなければならない。
――朝鮮問題において、日本は米「韓」と歩調を合わせるべきだとの主張が一部にあるが。
ミサイル問題など、国際的に影響を及ぼす問題が多い。これと関連して米国と朝鮮の会談が進められており、中国をはじめとする周辺国との関係も作用するはずだ。ここで進展があれば、全体的に見れば、この地域での対話の雰囲気がより確かなものになる。そのために役割を果たして行くことが大事だと思う。
――そうした姿勢は、日本が朝・日問題の解決に自主的でないという朝鮮側の主張の根拠になりはしないか。
訪問団に参加した政党代表らは、日朝間の理解を深め、交流を拡大するには、政府が自主的かつ円満に対話を推進できる環境が整わなければならないという見解を持っている。
――これまでも合意は数回あったが、実践が伴わなかった。
訪問団に参加したすべての政党代表が、今回の合意を実践し、実を結ぶよう努力するとの意思を持っている。無論、各党はそれぞれ自らの見解を持ってはいるが、日朝間の対話を再開する環境を整えるという志向は一致しており、異見はない。
――現時点で、1990年の3党共同宣言をどう評価するか。
政府の責任と権限における対話の内容と、政党の立場から行う対話の内容は異なる。われわれが政府の領域に踏み込むと、複雑さを帯びてくる。こうした見地から見ると、今回の合意は、政治家だからこそできることをまとめた内容になったと思う。
――朝鮮の政治家と向き合って対話した感想は。
大局的な見地から物事を見ているな、という印象を持った。
――初めて訪れた平壌の印象は。
美しく、整然とした秩序のある街だ。市民が活用できる施設も多い。今回の合意内容を実践に移し、実を結んだ後に、もう一度、訪れたい。1990年代最後の年の最後の月に整った合意内容を速やかに実現し、2000年を朝鮮の国民の皆さんとともに笑顔で迎えたいというのが、今の心情だ。