インプット本の紹介/インフォームド・コンセント 水野肇 著
インフォームド・コンセントとは医療用語で、医師が患者に対して病状と必要な処置の内容について詳しく説明し、患者の同意を得たうえで治療することを言う。「説明と同意」と訳されているが、より親切には「十分な説明に基づく同意」といったところか。
投薬、手術、放射線照射など、治療にはリスクがともなう以上、「決める権利は医師にはなくて患者にある」(著者)とするこの考え方は、欧米で生まれた。この本ではその背景と経緯について解説している。
同著の初版は1990年。著者はこの時点で、日本の医療現場では、「説明と同意」の重要性がほとんど認識されていないと指摘している。耳を疑う医療事故が相次いでいるところを見ると、今でもあまり変わりないのかも知れない。
さて、説明や情報の不足によって、リスクを取る側が深く傷付いているのは日本経済も同じだ。たび重なる金融不祥事などを経て、人々はそれに気付いている。医療であれ経済であれ、「説明と同意」は、いずれは当たり前のことにならざるを得ない。時流に遅れずに、新しい「常識」を学んでおきたい。(中公新書・216ページ・税別680円)
◇みずの・はじめ 1948年生れ。医事評論家