私の会った人/國弘正雄さん
今年6月、東京・新宿で開かれた朝鮮学校の生徒たちによる歌と踊りの公演を見ての第一声。
「イヤァー、素晴らしい。米国のカーネギホールに是非、子供たちを出演させたい」
正真正銘の国際人。国際社会での縦横無尽な活躍ぶりから「世界に人脈が山とある人」という印象が強い。英国エジンバラ大学特任客員教授の肩書きを持ち、米国の多くの大学に頻繁に講演を頼まれる。外国メディアからの取材の申し込みを1月に20件ほどこなす。
ところで、国際人の条件とは何だろうか。即座に明快な答えが返ってきた。「自国のことを熟知していること」。外国の事情に通じている必要はない、外国語に堪能かどうかでもない。大事なのは「現代史とくに隣国、朝鮮との『負』の歴史を直視して、きちんと受け止める姿勢」と説く。
「それこそが、国際舞台で活動する日本人にとって必要不可欠な『指針』です。半世紀前まで、日本は朝鮮人の土地を奪い取り、朝鮮語を禁止し、創氏改名、神社参拝を強要し、皇国民の誓いを読ませ、多くの人々を強制連行して炭鉱などで働かせた。そして女性らを軍の『慰安婦』として駆り出した、その歴史です」
こうした日本の過去を若い世代が知らなければいけない、と機会あるごとに話す。
「直接体験しなくても日本人として責任を負うべきで、 知らぬ、存ぜぬ は通らない。それで、 国際人 とか 国際感覚 なんて言うのはチャンチャラおかしい」と。(粉)