医協第22回学術報告会/京都
在日本朝鮮人医学協会(医協)第22回学術報告会が11月28日、京都JA会館で行われ、同胞医師や医療従事者、一般同胞、朝鮮総聯中央教育局の金元煥局長と総聯京都府本部の金光洙委員長ら150余人が参加した。
「報告会は準備、そしてテーマ発表の大部分を新しい世代が担当し、内容面でも『脳死・臓器移植』問題について、各地3400余人の同胞アンケート調査を実施(本紙11月22日号既報)したことや、『介護保険』問題でも兵庫県下同胞などのアンケート調査に基づいた提言が行われることなどが特徴だ」(医協中央の朴相鉉会長)。
午前に歯科、医科、看護、東医など6分科会で論文発表が行われ、午後の全体会では、(1)学校保健(2)介護保健(別項)(3)特別報告(4)シンポジウム「脳死・臓器移植から見えてくるもの」などが行われた。
ランチョン・セミナーでは、(1)ピルについて(2)カゼと漢方について(3)脱毛症についての報告が行われた。
開・閉会式では、朴相鉉会長、医協西日本本部の朴春浩会長(兼医協中央副会長)がそれぞれ挨拶。報告会後、懇親交流会が行われた。
「介護保険・社会保険」/医協兵庫支部が神戸で実施した意識調査
「65歳以上の年金受給者」わずか26%/91%の日本人と大きな差
58.5%が「介護保険をあてに」/制度への情報・知識は不足
「老後の経済的不安」は40.7%/日本人は23.4%、生活水準を反映
「神戸市で行った介護保険及び社会保障に関するアンケート調査結果」を、医協兵庫支部(李彰持会長)の李●伸・ポラム薬局代表(●は木へんに貞)が行った。
アンケート調査の質問項目は大きく分けて、(1)公的・私的サービスの利用有無など生活・介護実態について10項目(2)公的年金の受給有無などについて4項目(3)朝日新聞がさる7月に行った社会保障と介護保険に関する世論調査に準じた事項20項目、からなる。
結果によるとまず、「65歳以上の年金受給者」は日本人は91%だが、在日同胞はわずか26%で、無年金者は74%にものぼった。日本人と大きな違いがはっきりした。
また、「老後の生活で不安を感じること」では、在日同胞は「生活費など経済的不安」が40.7%で一番多く、「病気や体が衰えること」は39%だった。「介護不安」は7.6%と以外に低かった。
しかし日本人は、「病気や体の衰え」が38%で一番多く、「経済的不安」は23.4%。在日同胞と日本人の年金問題、生活水準が反映された(表1参照)。
(表1)老後の生活で不安を感じること(%)(一部複数回答あり)
同胞 | 日本人 | |
生活費など経済的なこと | 40.7 | 23.4 |
安心して住める場所があるか | 4.2 | 2.9 |
病気や体が衰えること | 39.0 | 38.0 |
老人性痴呆になること | 6.8 | 6.6 |
介護などで周りの人に負担をかける | 7.6 | 19.7 |
精神的に淋しい思いをする | 0.8 | 2.9 |
とくに不安は感じない | 6.8 | 6.6 |
その他 | 0.8 | 4.4 |
「介護保険をあてにしているか」では、「大いにあてにしている」日本人は10.7%で、同胞は26.3%と倍以上。「ある程度あてにしている」は日本人46.7%で、同胞は32.2%。合わせると同胞は58.5%になり、介護保険への関心、期待度は高いと言える(表2参照)。
(表2)介護保険をあてにしているか(%)
同胞 | 日本人 | |
大いにあてにしている | 26.3 | 11.7 |
ある程度あてにしている | 32.2 | 46.7 |
あまりあてにしていない | 28.0 | 28.5 |
まったくあてにしていない | 4.2 | 3.6 |
その他 | 7.6 | 9.5 |
「どの制度に力をいれてほしいか」では、「年金」への期待は日本人48.2%に対し、同胞は38.1%と低く、65歳以上では27.8%しか年金に期待していない(表3参照)。年金制度の差別問題が反映されているようだ。
(表3)どの制度に力をいれてほしいか(%)
同胞 | 日本人 | |
年金 | 38.1 | 48.2 |
介護保険 | 15.3 | 17.5 |
医療保険 | 34.7 | 32.1 |
その他 | 11.9 | 3.6 |
まとめとして、(1)介護保険制度に対する情報、知識が不足している。アンケートが制度の説明から始めなければならず、20〜30分かかるのがざらだった(2)同胞老人に無年金者が多いのが確認された(3)同胞に3世代同居率が高かった(4)65歳未満の同胞の場合、公的年金を受給できない(19.2%)、分からない(17.3%)が多く、正しい知識の啓蒙が必要である(5)同胞が「老後を安心して暮らせる社会を作るために」民族団体に11%が期待していることなどが指摘された。
そして今後の課題として、(1)同胞社会の社会保障の実態を把握するため来年、さらに多くの地域でこのような調査を行いたい(2)実施が来年に迫った介護保険で、同胞が不利かつ差別的な扱いを受けないよう行政への働きかけ、同胞組織による援助が行われるようにすることなどがあげられた。
調査方法 調査期間=9月上旬〜10月中旬。調査方法=神戸市内の同胞医療機関に通院している在日同胞と日本人の患者を対象に医協会員が直接面接。一部は近隣地域でも行った。有効回答数=在日同胞118件、日本人137件。