えこのみっくナビゲーター/「東京大停電」、2000年問題の「予行」に
コンピュータが誤作動を起こす恐れがある「西暦2000年問題」の発生まで、いよいよ1ヵ月を切った。さまざまなメディアを通じて、一般にも事の重大さがようやく浸透してきた感があるが、ここに来て不安を感じさせる事故が起こった。首都圏の約80万戸を停電させた先月22日の「東京大停電」は、コンピュータ依存、電気依存の都市基盤のもろさを改めて浮き彫りにした。在日同胞の中にも入院中の人や出産を控えた女性、パソコンを使う企業の経営者など、2000年問題に不安を抱える人は多いはず。今回の教訓を踏まえ、来たる2000年への備えを再確認する必要がある。
冷静な対応 心掛けよう
食料・備蓄、預貯金確認…/最低限の備えを
今回の事故は、私たちの生活が電気やコンピューターにいかに依存したものであるかを見せつけた。
2000年問題では「大規模な停電が起こらないことが、市民生活への影響を最小に抑える最大の条件」と言われる。電力ダウンによって、電気やコンピューターが関わるすべての機能が停止するのが、最もこわいからだ。
航空自衛隊の練習機が墜落した際、東京都や埼玉県に電気を送る高圧送電線を切断したことが、今回の停電の原因。この送電線は首都圏を支える電気エネルギーの「大動脈」だったため、約80万戸という大規模な停電につながり、一時的とはいえライフラインはまんまと寸断された。
交通や給水などのシステムに対して、関連各社は「十分な実験の末、トラブルにも即応できる」という「安全宣言」を掲げていたが、実際には電車も水もストップ。「安全宣言」はあっさりと崩れてしまった。
今回は計らずも、2000年問題のシミュレーションのような形になったが、様々な問題が露呈したことで、逆に2000年問題への対応を見直すきっかけになったとも言える。
今回のように局地的な事故なら良いが、複数のトラブルが全国で一斉に起こる2000年問題への対応はどうするのか。人命に直結している病院への対応が最優先ではないのか。解決すべき課題は多い。
だが、一般生活においては何よりも、どんな事態にも冷静に対応できるように心掛けることが大切だ。
例えば、▽ライフライン寸断という事態に備え、2、3日分の食料と飲料水、燃料などを備蓄▽救急箱や懐中電灯、ラジオ、乾電池などをこまめにチェック▽預貯金データがオンラインの誤作動で飛ぶ危険性があるので、こまめな記帳、振込内容や残高のチェック、領収書の管理を▽現金の持ち合わせには余裕を▽パソコンのデータは事前にバックアップを取る――など、身の回りのできることから十分に準備をしておいたほうが良いだろう。
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なお万が一、問題が発生した場合は、機械のトラブルについては各メーカーに問い合わせを。
また、企業でのコンピュータートラブルに関する相談窓口として、中小企業総合事業団が「2000年問題対応特別相談コーナー」(TEL 0120・200・269、午前10時〜午後5時)、中小企業地域情報センターが「2000年問題専用ダイヤル」(TEL 0120・200・451)を設けている。(柳成根記者)
電気依存のもろさ浮き彫り
交通マヒ、ライフライン寸断/病院に影響も
22日の「東京大停電」は、事故発生から約3時間後の午後5時過ぎには復旧したが、約80万世帯・事業所に影響が及んだ。主な被害は次の通り。これらは2000年問題においても十分に起こり得るものばかりだ。
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交通機関 JR武蔵野線、西武池袋・新宿線、営団地下鉄有楽町線など、JR・私鉄八線の運行が最大30分ストップ。プラットホームや地下通路の電灯はすべて消え、券売機や自動改札口も動かなくなった。
エレベーター 中に閉じ込められたとして救助を求める119番通報は、都内だけで15件に上った。
水道 都内の6つの浄水場や給水場のポンプが止まり、33万世帯で水が濁ったり出にくくなった。
店舗営業 スーパーマーケットのレジが動かず、急きょ手書きで計算するなど対応に追われた。ファクスや電話が使えず、注文が受けられないケースも。
ATM 289ヵ所の郵便局で使えなくなった。銀行や証券会社も同様。
病院 手術中に人工呼吸器や検査装置が動かなくなり、自家発電に切り換えたり、装置のない所では復旧を待って手術を続行。酸素吸入器が停止し、一時呼吸困難に陥った人もいた。