着実に活躍の場広げる在日同胞女性たち
夢の実現は立ち止まらないこと
ウリハッキョ(朝鮮学校)を卒業後、女性ならでは、の感性を生かしながら、各方面に社会進出する在日同胞女性が日々、増えている。国籍や差別の壁もなんのその、自分が本当に満足できる仕事を選び、輝こうとする彼女たち。着実に活躍のフィールドを広げている。
「カリスマ美容師」/朴美然さん
やりたいから負けない
「カリスマ美容師」として、女性誌に紹介されたこともある朴美然さん(31)は、東京・渋谷区代官山の美容室で1日、予約客10人以上をこなす売れっ子だ。
東京朝鮮中高級学校卒業後、美容院で働きながら通信教育を受けた。見習い、アシスタントとして5年の実習期間を経て、試験にパスし美容師に。
思っていたより、ずっと厳しい道のりだったが、幼い頃から「とにかく手に職を」という気持ちと、やりたい仕事だったから「負けたくなかった」と言う。
先日、東京で行われた国際女性映画祭では、通訳も兼ねて南朝鮮の女優のヘアメイクを担当した。久し振りにウリマル(朝鮮語)を使って緊張したが、刺激になり、こうした仕事も今後、積極的にこなしたいという意欲が生まれた。
最近、カットをしている最中に、「私も同胞です」と、声をかけられることがよくあるそうだ。
「この業界にはもっと同胞がいるはずだが、本名を使っていないためか、とくにネットワークはない。本名を名乗る方がメリットになると思う」と言う。
そして、ヘアメイクに興味のある在日同胞はどんどんこの業界にきてほしい、と付け加えた。
コンサルティング・マネージメント/金薫好さん
失敗も成功も自分
東京・港区赤坂に株式会社「エイミス」を構える金薫好さん(38)。外資系の会社で働いていた友人と一緒に今年3月、設立した。
「仕事の内容は、コンサルティング・マネージメント。日本で企業を起そうとする外国人の『お助けマン』です」
会社勤めをしていた時、外資系なので当然、外国人との付き合いが多かった。彼らから、日本で何かをしたいという相談が後を絶たなかったそうだ。
そのことが、「コンサルティング・マネージメント」をやってみようという契機になったという。
だがこの仕事、始めようと決断を下すには、相当な決心が必要だった。会社となれば利益を出していかなければならない。外国人の面倒をみるだけの、ボランティアというわけにはいかないからだ。
「会社勤めと決定的に違うのは、成功しても失敗しても、すべて自分に返ってくるところ。行動力と、知恵が会社を左右する。スペシャリストではなくジェネラリストが求められる」
在日同胞という立場も、仕事に多いに生かされている。「これほど、日本に精通している外国人はいない」からだ。
今後は、身のある仕事を沢山手がけたいという。
理学療法士・スカイダイバー/金景美さん
もう一つの「顔」
在日同胞女性でこの仕事に従事しているのは、5人前後しかいないという理学療法士の免許を持つ金景美さん(35)。東京朝高を卒業後、都立豊島高校の定時制に通い、リハビリテーションの専門学校に入った。10倍の倍率だ。
「社会復帰の手助けをできることが、この道を選んだ動機だった。落ち込んでいた人が、元気に退院していく姿を見ると、喜びを感じる」という。
事故や脳卒中で体が不自由になった患者へのリハビリには、一定の安定した精神状態で接することが求められる。「物静かな口調」はそのためかと思ったが、実は金さんには、もう一つの「顔」があった。スカイダイビングの、インストラクターの資格を持っているのだ。
これまで世界選手権に2度出場し、97年のトルコ大会では世界チャンピオンに輝いた。
今は一時、「お休み」しているが、以前は、月に2回の練習を欠かさなかった。
「五感が刺激され、余計なものをすべて忘れ、集中することができる。たった1分の競技だが、空中ではその1分が何にも代えがたい密度の濃い1分となる」
南の選手と世界大会で出会った時、「いつか南北の統一チームで出場できれば」と、夢は広がった。
金さんは、夢を実現させるためには、「立ち止まらないこと」と答えたが、3人の女性に共通する点でもあった。(金美嶺記者)