貸し渋り信用保証、来年度から経営改善策の提出義務化


 通産省は、中小企業の「貸し渋り」支援策として実施してきた特別信用保証制度を見直し、保証を受ける企業への経営改善プランの提出義務付けを検討している。経済構造改革の主眼は、将来性のある中小企業を育てて活力を生むことだ。企業は今後、有利な制度を利用していくうえでも、自らの「やる気」を、一層アピールする必要が出てきそうだ。

 

点検項目

 通産省は制度の今後の運用について、原則として金融機関の「貸し渋り」を受けている中小企業を広く対象としながら、同時に「雇用の増大」「販売、精算、仕入れ面における改善」など「建設的努力」の計画を有することを、来年度から対象要件に追加するとしている。

 中小企業庁は「具体的な内容については検討中」としているが、日本経済新聞16日付は「『商品の販促地域を絞り込む』『原料の調達コストを削減するため、他の企業と共同で仕入れる』などの点検項目を設け」「コスト削減などについて数値目標は設けない方針」と報じている。

返済に苦しさ

 同制度は、97年末ごろから深刻さを増した金融機関の貸し渋りに対応するために、20兆円の保証枠をもって昨年10月1日にスタートした。

 不渡りによって金融機関と取引停止中の企業や、保証協会の代位弁済を受けて債務が残存してる企業などは対象から除外されたものの、信用保証の条件は極めてゆるく、都道府県の信用保証協会は積極的に保証を承諾してきた。

 企業の反応は大きく、制度スタート後の保証申込件数は、それ以前の2倍の水準で推移。今年10月末時点での保証承諾額は約18兆円に達した。こうした動きについては、信用不安を回避するうえでかなりの効果を生んだとの見方がある。

 しかし、制度開始から1年が経過した今年10月を境に、利用企業の倒産が増加している。1年間の返済猶予期間が過ぎ、返済に苦しむ企業が出てきているためだ。

延長に批判も

 日本政府は先月、制度の期限を今年度末から1年延長して2000年度末にすること、保証枠も現行より10兆円拡大することを決定した。

 民間のエコノミストなどはこれに対し、「競争力のない企業を延命させるだけ」「将来性が見込めるベンチャー企業などに対象を絞り込むべき」との批判を強めている。淘汰されるべき企業を保護し続けることは市場原理に反し、健全な企業の育成をも妨げるとするものだ。

 中小企業庁は、貸し渋り対策はなお必要との立場を堅持しており、特別信用保証制度の見直しも、対象企業を著しく絞り込むものではないとしている。しかし、「活力ある中小企業の育成という大きな流れに沿ったもの」(計画部金融課)であることも確かだ。

 中小企業はこうした流れに乗り続けるためにも、自らの進路をより明確にする時期に来ていると言える。(金賢記者)

 

中小企業庁、2000年問題に対応/融資・税制で支援策

 今年も残すところ1ヵ月余りとなり、中小企業庁ではコンピュータの西暦2000年問題への備えに万全を期すよう、中小企業に呼び掛けている。

 すでに対策を講じている企業も多いと見られるが、万一の時には取引先・関連企業に多大な影響を与える。同庁では予期せぬトラブルにも対応できるよう、年末年始に向けて(1)社内緊急体制の構築(2)コンピューター機器納入会社・ソフトウェア開発会社などとの事前の打ち合わせ(3)問題発生時に必要となる原材料、手元資金の把握――などの危機管理計画の作成を勧めている。

 コンピュータの入れ替えやプログラム修正に要するコストについても支援策が取られている。

 資金面では中小企業金融公庫と国民生活金融公庫からの低利融資を受けられるほか、税制面では即時償却制度・特別償却税額控除などが適用される。

 相談は、2000年問題専用のフリーダイヤル(TEL 0120・200・451)を通して、各地の中小企業地域情報センターなどで受け付けている。