春夏秋冬
幼い頃、オネショをした翌朝、オモニに、隣へ行って塩を借りてこいと言いつけられた。隣のアジュモニは、「塩」という言葉を聞くや、理由も言わずにお尻をぶち始めた。泣いて帰ってもオモニは、知らん顔をしていた
▼小学校の頃、知らないヒョンニムが名前を呼んで小遣いをくれた。親に話すと、そのヒョンニムは近所に住んでいる誰それの息子で、お前が小さい頃、よく遊んでくれたのだと教えてくれた
▼ツッパっていた頃、友だちの家へ遊びに行って、どこのよそ者だとリンチされそうになった。通りかかった友人の姉が、助けてくれた。以来、友人宅の近くは大手を振って歩けるようになった
▼結婚式の時にはトンネ(同胞が集まって住む集落)を挙げて大騒ぎしていた。出稼ぎに行っていたアジョシも戻ってきて、夜遅くまで笑い声と怒号、茶わんの割れる音で賑わっていた。同胞がトンネに住んでいた頃の話である
▼同胞社会も核家族化が進み、また強制退去などで、オネショした子どものお仕置きを頼む隣人がいなくなった。国際結婚、独身者の増加も、トンネ社会だったら、世話好きのアジュモニが放ってはおかなかったろう。冠婚葬祭はもちろん、急場の金の工面や就職問題しかりである
▼トンネはなくなった。といっても、それは地理学的な集落がなくなっただけで、相互扶助というトンネの精神は、現在も脈々と受け継がれている
▼通信・交通手段の発達によって、瞬時に相手と会話でき、1日あれば、日本中、誰とでも会えるようになった。そして新しい形態のトンネ、同胞ネットワークが生まれている。(元)