春夏秋冬
ベルリンの壁が崩壊して10年(9日)が過ぎた。当時、この事態は「社会主義に対する資本主義の最終的勝利」と評されていた。が、この10年間を振り返ってみると、決して資本主義の勝利ではなかった
▼ドイツのシュレイダー首相は先月3日、ベルリンの壁崩壊直後、ライプチヒのデモ隊が「われわれは一つの国民だ」と叫んだスローガンが、いまだに実現されていないことを率直に告白した。西ドイツ人が東ドイツ人を経済的負担だと考え、東ドイツ人はそうした西ドイツ人に怒りさえ感じているというのだ
▼「東欧革命」の引き金を引いたチェコ、ハンガリー、ポーランドでもこの10年間、経済不況が庶民を直撃した。物価が上昇し、福祉制度が大幅に縮小され、老弱者が犠牲になった。「消費天国の春」をおう歌したのは、マフィアとごく一部の「選ばれた人間」だけだった
▼一昨年のアジア通貨危機は、市場主義のもろさを証明した。利潤を求めてタイに投資していた金融資本が、メリットが無くなると一斉に資金を引き揚げ、その結果、バーツが暴落してアジア経済が破たんし、仕掛け人のヘッジファンドも危機に陥ったのだ
▼地球というパイには限りがある。弱肉強食の資本主義がパイを食べ尽くすまでに時間はかからない。いやすでに、ほとんど食べ尽くした。そのあげく、タコのように自分の足を食べているというのが、こんにちの資本主義ではなかろうか
▼人間が搾取し、搾取されることなく平等に暮らす――これが社会主義の原点だと思っている。人類が長い歴史を通して試行錯誤の末にたどり着いた理想なのだ。 (元)