川崎市、来春に入居差別禁止を条例化/外国人会議の提言を実施


 川崎市は来年4月から、外国人に対する入居差別を禁じる条例を施行する。同様の条例は、すでに東京都などが制定しているが、川崎市の場合、保証人機構を設けるなど実効的な措置を講じた点が特徴だ。この条例は、3年前に外国人の声を市政に反映するため、市が設置した外国人市民代表者会議(李仁夏委員長)が当初から求めていたもの。会議で話し合われた内容が、市政に反映された具体的な事例といえる。

 

メンバー全員が差別体験

 入居差別を禁じる規定は、現在、市が来春に向けて作成中の「住宅基本条例」に盛り込まれる。

 外国人会議が開催されて以来、入居差別の問題は関心が高かった。生活する上での基本的な問題ということもあったが、26人のメンバー全員が差別を体験していたためだ。

 会議では「理由もなく断られた」、保証人が日本人の場合でも「日本人が住むわけではない」といった体験が次々と発表された。同時に解決を促す対策も話し合われ「日本人の偏見をなくすには、日本も批准した国際人権規約や人種差別撤廃条約に基づき条例で差別を禁じなければならない」との意見が出された。条例制定の意見は初年度の提言(96年度)に盛り込まれ、市長や議会に提出された。

 入居差別を禁じる条例は東京都や新宿区にもあるが「賃貸人に対する啓発」にとどまり、実際効果を発揮するものとはいいがたい。会議は条例の効果を上げる方法も検討し、97年度の提言には(1)外国人のための住宅ストック確保(2)不動産業者に対する啓発強化(3)保証人機構の設立―などの内容を新たに盛り込んだ。

 

家主らの偏見解消に

 外国人会議からの提言を受け、現在市は外国人のための居住支援システムを作成中だ。

 東京都が92年に実施した調査によると、貸主が入居を断る対象のトップは1人暮らしの高齢者と外国人。外国人に対して「不安を感じる点」は(1)保証人がいない(2)他の入居者とのトラブル(3)家賃を支払わない―など。しかし、理由のトップにある保証人問題に関しては、日本に来て間もないニューカマーに肉親がいないため、解決が難しい。

 川崎市は各種調査を通じて、貸主の外国人に対する偏見が、自身が直接迷惑を被ったりトラブルに巻き込まれた訳ではなく、噂や聞き伝えによるものとの結論を引き出した。

 しかし、貸主の不安を解消する措置は必要との判断から保証人機構を設立することにした。外国人が保証人に立てる保証会社を、市が金銭的にバックアップするのだ。家賃の滞納があった場合など市が代わりに支払うことを保証し、家主の不安を解消する考えだ。

 また、外国人が安心して住み続けられるように貸主と入居者とのトラブルに対する支援システムも作る。

 外国人とのトラブルは食生活や文化の違いに基づくものが多い。市は国際交流協会や民族団体とネットワークをつくり、当事者同士の意思疎通をスムーズにする考えだ。

 一番の問題は貸主や不動産業者の偏見をどう取り除くかだ。今後、市は外国人に積極的に物件を貸す「協力店」を不動産業者から募り、協力店にはステッカーを貼り、差別を解消するためのパンフレットも作成する。外国人が受けた差別の調査も条例に盛り込む方針だ。

 市のまちづくり局小林延秀主査は「何を差別と見なすか、罰則規定がないなど条例は完璧なものではないが、不動産業者の意識改革ができたら」と話す。(関連記事6面、張慧純記者)