春夏秋冬
タイ、カンボジア、シンガポール、マレーシアなどアジアへの海外旅行がブームだという。老舗の中国、香港、マカオ、ソウルはむろんだ。理由は価格の安さ。航空運賃の割引合戦がその背景にある
▼「○○○○5万円!」の広告にひかれ、一度も体験したことのない海外旅行に行こうと思い立ったある同胞の話。かりに李さんとしよう。さっそく募集している旅行社に電話を入れ、予約を申し込んだ。電話口に出たのは声からして20代前後の女性社員だった
▼李さん「もしもし、予約をしたいんですけど」女性社員「ではパスポートナンバーをお願いします」李さん「海外へは初めてなので、パスポートは持っていません」女子社員「パスポートがなければ行けませんので、取得して申し込んで下さい」李さん「再入国許可書で大丈夫ですか」女子社員「再入国許可書? それなんですか。パスポートじゃないんですか。パスポートがなければ旅行できません」李さん「だから、再入国許可書なんですよ」
▼再入国許可書の何であるかを知らない、女子社員との間で十分くらい問答が続き、結局は彼女の上司とおぼしき男性社員が電話を代わり、「再入国許可書で結構です」、で話はついた
▼李さんいわく「朝鮮籍って何ですか、と聞き返されてしまった」。女子社員の頭の中には、在日同胞=「韓国籍」という認識しかなく、それが、再入国許可書の何であるかの問答を繰り返すことになった原因だった
▼初めての海外旅行にチャレンジしようとして、日本社会のちょっとした「壁」にぶち当たった李さん。「本当に骨が折れる」。(彦)