見る人を魅了する李朝の焼き物「青花」
高麗青磁、李朝白磁に代表される、世界的にも有名な朝鮮の焼き物。李氏朝鮮王朝(李朝)時代(1392〜1910年)の15世紀後半から製作が始まった青花もその一つだ。青花とは、白磁の肌に青料(コバルト)で絵付し焼成したもので、青は色、花は模様を表す。世界的に有名な「安宅コレクション」を収蔵する大阪市立東洋陶磁美術館(大阪市北区中之島)で企画展「朝鮮時代の青花」が開かれている。
コバルトで絵付/前、中、後期 それぞれの特徴
朝鮮時代、国家の指導理念として、高麗時代の仏教に代わり儒教がとり入れられた。儒教は清浄、清廉(れん)、潔白などの感性を人々に求めた。その影響を受けて、焼き物の世界でも優美な高麗青磁に代わり、清楚(そ)さの漂う白磁が奨励されるようになったと言える。
白磁にコバルトで絵付した青花は、李朝の前(1392〜1650年頃)、中(1650年頃〜1751年)、後期(1752〜1910年)によってそれぞれ特徴がある。
「中国から輸入していたため、コバルトが高価で貴重だった前期には、宮中の絵師(画員)が窯場(かまば)に直接出向いて絵付したようだ」と同館の肥塚良三氏は語る。そのため、絵のすばらしさは群を抜いており、梅、竹、松などの文様が多い。梅と竹が見事に描写された「青花梅竹文壺(せいかうめたけもんこ)」(15世紀後半)もその一つで、見る人を引きつける。
中期の作品には、簡素な絵で余白を残した作品が目立つ。乳白色の白磁に十字架状の仙人草(クレマチス)、菊、ランなどが素朴に描かれた。「青花窓絵草花文面取壺(せいかまどえそうかもんめんとりこ)」(18世紀前半)などはその特徴をよく示している。
後期には、清朝文化の影響を強く受け、不老長寿を表す十長生文、子沢山の願いを込めたブドウやザクロの文様などが見られる。
豊臣軍によって打撃/中期、余白の絵は余裕のなさ?
中期は余白に素朴な絵が描かれているのが特徴だが、これには外敵のたび重なる侵略が一定の要素を与えていると指摘する向きもある。
実際、豊臣秀吉軍の2度にわたる侵略(1592〜98年)、清軍の侵略(1636年)によって、焼き物の生産は大打撃を受けた。また、豊臣軍は優秀な朝鮮陶工を多数、日本に連れ去った。その彼らが、日本で興(おこ)したのが有田焼などである。
このことから、余白が多いのは、それを好んだというより経済的余裕がなかったと推測するのも可能だ。 作品のすばらしさを鑑賞するに止まらず、その歴史的背景や当時の人々の思いをめぐらしてみるのも悪くない。(文聖姫記者)
企画展「朝鮮時代の青花」大阪・東洋陶磁美術館で開催中
3期に分類、45点展示
企画展「朝鮮時代の青花」では、時代を前期、中期、後期に分類した。そして、時代と共に移り変わる青花文様の現れ方が分かるよう、館蔵品の中から45点を展示している。
焼き物の美しさもさることながら、文様の変化、白磁の肌やコバルトの色の微妙な違いなどを見ることで、その背景にある思想、風俗、嗜好(しこう)などをうかがい知ることができる。
※28日まで。開館時間=午前9時30分〜午後5時(入館は午後4時30分まで)。月曜休館。