女のシネマ/葡萄酒色の人生 ロートレック

世紀末の画家の生と恋


 19世紀末、パリの裏街・モンマルトルに住みつき、そこに生きる娼婦や踊り子たちをこよなく愛し、終生描き続けた天才画家、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックの愛とワインに満ちた伝記映画。

 モンマルトルは、20世紀芸術の揺籃の地。あらゆる国のアーティスト、人種・階層を超えた人々が集まる。貧しいが自由、猥雑だが、活気溢れる街。

 ロートレックはフランス屈指の名門貴族に生まれたが、少年の頃の骨折がもとで下半身の発達が止まる。そこに近親結婚による遺伝的虚弱体質もあった。

 しかし、彼は持ち前の快楽さとユーモアのセンスでこの身体的弱点を克服、誰とでも分け隔てなく接し、皆に愛された。尊敬するドガに認められ、孤独なゴッホとも親交を深める。

 このロートレックが奇跡の画家と言われるのは、油彩画と石版画ポスターの制作という異質の創作を同時にやってのけたからだ。

 そんな才能に最も嫉妬したのは、画家が一目惚れした恋の相手、シュザンヌ・ヴァラドン。

 シュザンヌは未婚の母、ルノアールやドガのモデルをしながら自ら絵筆を執っていた。巧みなデッサン力はロートレックも認めるほど。結局、この恋はロートレックの才能をねたむシュザンヌの激しい嫉妬心によって破綻する。愛よりもライバル意識の強さ。この男女関係、すこぶるモダン。

 自我に目覚めた女は、易く自らの人生を放棄しない。シュザンヌは、ロートレックと別れた後、恋の遍歴を重ねながらも画家としての自我を貫いていく。ちなみに、朝鮮の女たちは、反侵略、反封建の闘いの緒についた時代である。(2時間8分、フランス・スペイン合作)(鈴)