春夏秋冬


 「なぜ、この時期に核武装発言?」と、西村防衛政務次官が首を切られた。非核3原則を知らぬわけでもなし、確信犯である。「選んだ人が問題」と述べた政治家もいたが、時計の針を6、70年前に戻した時代に「生きている」人物を要職にすえたことに、首をかしげた人は多かった

 ▼しかし、安保や過去の問題について、なんと常識のない発言の多いことか。侵略戦争を「正当防衛」とか、欧米の侵略からアジアを解放するためだったとか、侵略の被害者が目の前でその事実を明らかにしているにもかかわらず、耳を手でふさぎ目を閉じ自らの言いたい放題をぶちまける

 ▼団塊世代の「アイドル」だった吉本隆明(吉本ばななの父)が、新著で侵略論を整理しながら、首を切られた御仁に連なる漫画家の小林よしのりを「バッサリ」と切り捨てている

 ▼欧米に対する「正当防衛」論を、では被害者が存在する理由をどのように説明するのか、1人でも被害者がいるということは侵略にほかならないと、明快だ

 ▼「吉本隆明、健在なり」を見せつけているが、現実追認が社会のあちこちで幅を聞かせていることへの警鐘でもあろう。それにしても、朝鮮半島への自衛隊(日本軍)派遣の道を開いた周辺事態法、その関連法案が相次いで制定されるなかで、いとも簡単に「核武装論」が政治家の口をついて出ることに、背筋が寒くなる

 ▼日の丸、君が代、神社参拝、創氏改名…、日本の侵略を故郷で目(ま)の当たりにした1世、その事実を聞かされ続けてきた2、3世。歴史の溝を埋めるためには、積極的に発言していかなければならない。  (彦)