教えて 生活と権利/配偶者の国籍
Q 日本人配偶者の「国籍」を「朝鮮」表示にできますか?
A 日本の国籍を喪失する事はありません
Q 私は外国人登録上、「朝鮮」表示の在日朝鮮人男性です。結婚した日本人女性の国籍を、私と同じ「朝鮮」表示にすることができますか。
A 結論から言えば、事実上困難だと言わねばなりなせん。
日本の国籍法は夫婦国籍独立主義をとっており、この日本人女性が外国人であるあなたと結婚しても日本の国籍を喪失(そうしつ)することはありません。
一方、あなたは「朝鮮」表示で、朝鮮民主主義人民共和国国籍と「韓国国籍」を併せ持っていますが(本紙6日号参照)、日本政府は改正「韓国国籍法」(1998年6月14日)施行以前は実務上旧「韓国国籍法」を適用してきました。
すなわち、旧国籍法第3条1号によれば、「韓国の国民の妻となった者は同国の国籍を取得する」と規定していますので、婚姻と同時にこの日本人女性は「韓国国籍」も取得することになっていました。ただし、婚姻によりいったん取得した「韓国国籍」は、6ヵ月以内に日本国籍を離脱しなければ自動的に喪失すると規定しており、したがって日本人女性は婚姻後6ヵ月以内に「韓国国籍」を選択する手続きをとれば、日本国籍を離脱し(日本国籍法13条)、外国人となり、外国人登録を行って国籍欄を「朝鮮」もしくは「韓国」表示とする取り扱いになっていました。
「共和国国籍法」は、日本と同じ夫婦国籍独立主義をとっているものと考えられ(「共和国国籍法」11条参照)、日本人が「共和国国籍」を有するあなたと結婚しても国籍は付与されません。
ところが、改正「韓国国籍法」では、夫婦国籍独立主義を取り入れ、「韓国国籍」をもたない者が「韓国国籍」をもつ者と結婚しても「韓国国籍」を取得しないという扱いにし、在日同胞を配偶者とする日本人の「韓国国籍」の取得は「帰化」によるものとし、旧法のような随伴事項としてではなく、「帰化」要件の緩和で対応する扱いとなりました。
新法では、一般外国人の「帰化」要件として、5年以上継続して「韓国」に在住すること、品行方正なこと、独立生計能力をもつことなど5つを求めています(「韓国国籍法」第5条)が、婚姻による場合は「簡易帰化」で対応するとし、婚姻した状態で2年以上継続して「韓国」に住所がある者(設問の場合は日本人女性)、または婚姻後3年が経過し、かつ婚姻した状態で「韓国」に1年以上継続して住所がある者(同)については、簡易の「帰化」許可を得ることができると規定しています。(「韓国国籍法」6条2項)
以上のように条文上は、在日同胞の日本人配偶者が朝鮮(または「韓国」)表示に改めることが可能であるように思われますが、これら夫婦の生活の基盤・性格の根拠は日本にあり、
継続して2年(または1年)「韓国」に住所を構えることは事実上困難だといわねばなりません。
※ここでいう「朝鮮」表示、「韓国」表示とは、外国人登録の国籍欄の表示を言います。
高英毅弁護士
コ・ヨンウィ 大阪市生まれ。東京大学卒業。在日本朝鮮人人権協会会員で同胞法律・生活センター相談員。連絡先=03−5818−5424