99年度焼肉店経営集中講座/不況は承知、自店のみなおしこそ
1999年度朝鮮料理(焼肉)店経営集中講座の第1回講座(主催=商工連・同胞飲食業者協議会)が10月19〜20日、東京・上野の朝鮮商工会館で行われ、日本各地の同胞業者ら約70人が参加した。メニューは経営戦略と接客サービスに関する講義と繁盛店の見学。次回は11月に行われる。参加者の表情を追った。
緊張ひしひし/まったなし「やるしかない」
「この夏の売上は大幅に下がった。予想より全然悪い」「2割ほど落ちたところもあるらしい」
初日の講義を終え、繁盛店の見学に向かう電車の中、参加者の間からこんな会話が漏れ聞こえた。
「関東は暑い日が続いたのに」「販売促進の手を打ったが効かなかった」
夏は焼肉店にとってかき入れ時。不況はもとより承知だが、結果は、それを加味した予想をなお下回った。敗因について頭を寄せ合って考えるが、かいもく答はみつからない…。
目的地は、東京でも有名な「若者の町」だ。3手に分かれ、低価格が売りの繁盛店に客として入った。
若者で埋まった店内に、やや場違いな団体が陣取る。一通り味見を終えてレジに並ぶと、外には空席待ちの客が約20人いた。店員いわく「お客さんたちが団体で来られたからですよ」。
とは言え、週末主体の業界にあって、火曜日にこの入りなら上々だ。
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一行は上野の会館に帰り、見学の感想についてディスカッション。
「安いわりに味は良かった。低価格店のイメージが変わった」「若者の町でなければ通用しない。サービスもいただけない」
評価は賛否両論、様々だが、「あの店は確かに繁盛している。あの町、あの客層にピタリとはまっている。自店の場合はどうなのかを考えよう」との方向に落ち着いた。
昼間の講義でも、不景気の原因はテーマではない。現状を自明のものとして、いかにして生き残るかを考えるだけだ。
強調されたことの一つに、「コンセプトの見直し」がある。自分の店は、どんな客が生活のどんな場面で、誰と、幾らくらい使う店なのかを明確にイメージすべきというものだ。店舗見学に際しては、「あら探しをせず、相手の良い所を取り入れることを考えて」と念を押された。
こうした言葉を素直に受け入れる参加者の表情には、「勝ち組」「負け組」の時代を迎えた緊張感がある。
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2日目の午後、今度は新宿の「叙々苑」を見学。料理を味見しながら、朴泰道社長の解説に耳を傾けた。
最初に訪れた東京オペラシティー店(初台)は、高層ビルの53階にある。夜景が売り物で、90坪の家賃は月に400万近くする。次は、歌舞伎町にある同社の高級業態「游玄(ゆうげん)亭」ビルへ。7フロア合わせて600坪。11月のフルオープンに向けて工事が進む。
料理人から身を起こした朴社長の指導は、「料理を食べたら、タレや汁も十分味わって。舌に覚えさせなきゃ」と、いかにも泥臭い。若手に対しては「まだまだ熱意が足りない」と厳しいしったの声も飛ぶ――。
大企業の顧問も務める経営コンサルタントの講義に、一流店の見学。参加者らに光明は見えたのか。
「やるしかないでしょう。生き残りがかかってるんだから」。相模原市から来た朴一賢さん(28歳)は2日目の夜、講座を終えたその足で、店に向かった。焼肉戦争の現場は、今や待ったなしだ。(金賢記者)