春夏秋冬


 米国は世界最大の核保有国である。爆弾、ミサイルというスタンダードな物から、兵士が背負って運べる地雷まで、開発していない物はない。そして、自らがかかわるどの地域の紛争においても、相手が音を上げない限り最終的に核を使用することを作戦の柱にしている

 ▼その米国が、核政策の中心にすえているのが不拡散である。パキスタンで軍事クーデターが起きた時、米国がまず心配したのは、核兵器の「行方」だった。インドとの局地戦に使用するのではないか、と危ぐしたのだ。朝鮮半島がかつてなく緊張した94年の理由も、米国が「北朝鮮の核開発」疑惑を口にしたからだった

 ▼10月12日に公表されたペリー報告書は、対朝鮮政策の抜本的見直しを米国政府に提起しながら、そのための前提条件として、「北朝鮮の核兵器と長距離ミサイル開発関連活動の中止」をあげた

 ▼自国の核兵器は棚上げにしたまま、他国の動きには異常に敏感になる。その米国が核の拡散を止めるために、主動的な役割を果たした核実験全面禁止条約の批准をできなかったというのだから驚きだ

 ▼インド、パキスタン、そして朝鮮に署名を促しながら、米上院はクリントン政権と対立する共和党のみならず、民主党議員の一部も加わり否決してしまった

 ▼故ケネディ大統領は、62年のキューバ危機の直後に、「理念の違う国も共に暮らせる国際社会を作ろう」という趣旨の演説をしたことがある。その一方で、CIA(米中央情報局)を使ってカストロ政権の打倒工作を行っていた。2つの顔を持つ米国、その姿は今も変わらない。 (彦)