米企業投資使節団、来月中旬に訪朝へ


経済制裁緩和に素早い動き/商務省官僚が同行

予想覆す進展ぶり

 駐南朝鮮米商工会議所(以下会議所)のジェフリー・ジョンス会長が8日、南朝鮮に進出している米企業を中心に投資使節団を構成し、来月中旬にも朝鮮を訪問する考えを明らかにした(中央日報9日付)。

 また、米政府が運営している「自由アジア放送」は米商務省のチョン・ドンス戦略輸出室長が経済使節団の派遣を進めていると語り、チョン室長の発言が「米国の対朝鮮経済制裁緩和によって両国間の経済交流が本格化する動きを見せているなかでなされたという点で注目される」と指摘した。

 クリントン米大統領が先月17日、対朝鮮経済制裁の一部緩和を発表した当時、経済制裁緩和は、象徴的な意味はあっても実際に米企業が投資に乗り出すまでは、相当な時間がかかるというのが、大方の見解だった。しかし今回の投資使節団派遣は、朝米の関係が経済的にも予想以上に進展していることを物語っている。

 とくに投資使節団メンバーに米政府官僚が加わるという事実は、朝米の経済関係がこれまでの民間の極めて限られた範囲内の交流から当局が参与する関係へと数段、進んだことを意味する。

 

着々と進められた準備

 米企業の対朝鮮投資表明は、急に浮上したものではない。

 すでに92年3月、会議所は「92年度貿易年次報告書」を通じて「北朝鮮を敵性国分類から解除」することを自国政府に要望していた。当時はニューヨークで初の朝米高位級会談(92年1月)開催、南北合意書採択(91年12月)という背景があった。

 そして今年6月にはジョンス会長ら会議所のメンバー10余人が本国に出かけ、対朝鮮経済制裁の解除を政府に正式に要請し、朝米ベルリン会談(9月7〜12日)妥結直後の9月13日には朝鮮との経済協力問題を主導する「北朝鮮委員会」設置の検討を開始したという経緯がある。

 南朝鮮経済界に精通する筋によると、ジョンス氏は朝鮮語を堪能に操ることのできる会議所初めての会長で、朝鮮半島情勢にも詳しく、単なる思いつきで対朝鮮投資を表明したのではないという。

 それから米ゼネラル・モータース社(GM)のランドルフ・アジア太平洋有限会社社長は、95年5月、羅津―先鋒自由経済貿易地帯を訪れた際、同地域に自動車部品製造工場を建設する強い意向を表明したと、朝鮮中央通信が伝えたことがある。この件について当時、平壌の関係者は、GM以外の米企業名を挙げ、それらの企業が米政府の制裁解除を切実に望んでいると語っていた。

 

インフラ問題は二の次

 米国の対朝鮮経済制裁一部緩和が発表された際、ほとんどの朝鮮半島有識者が米企業の進出に懐疑的な反応を示した理由は、朝鮮の政情が不安定でインフラ整備がなされていないということだった。

 ここで注目したいのは、ペリー朝鮮半島政策調整官が、朝鮮が崩壊しないと断言し、それまでの崩壊を前提とした政策の転換を政府に建議したという事実だ。これで、投資の第1条件である政権の安定がペリー調整官によって保障されたと言える。

 インフラの整備についても「投資に対する保証さえあれば、インフラの整備はお金で解決できるので、大きな問題にはならない」というのが、米国の経済事情に詳しいジャーナリストの話である。

 カナダ政府が設定したアパレル関連の対朝鮮輸入制限枠は25万8000着だが、今年上半期実際にカナダへ輸出されたのはその内の3.15%、8122着に過ぎない。その主原因は、原料となる繊維そのものの不足で、それさえ解消されれば、いくらでも製品を輸出する能力が朝鮮にはある。

 制裁緩和によって、数ヵ月後には米政府も対朝鮮輸入枠を提示すると見られるが、これも米企業が対朝鮮投資に意欲を示す理由の一つだ。(元英哲記者)