取材ノート/現在、過去、未来―自分を知る1歩
8面の下段で連載中の、「わがまちウリトンネ」の取材を担当している。
すでに山口・下関、福岡・小倉を紹介した。地域同胞社会の歴史を掘りおこしていくものだが、こうした作業を行っていたのは、60年代中盤までは一部の在日の歴史研究家、日本の研究者に限られていた。70年代に入ると、朝・日合同による朝鮮人強制連行の真相調査などが活発に行われ、強制連行に関しては多くの成果がえられた。しかし、戦後の同胞たちの生活状況をはじめ、トンネがどのようにして形成されたのか、という点については一部しか明らかにされてこなかったと思う。
2世たちは、戦後の混乱期を身をもって体験しているものの、生活のきびしい時代とあって、親がどのような経緯で日本に渡ってきたかを聞くことのできなかった人も少なくない。また、ハラボジ(祖父)から聞かされたという3世も中にはいるだろうが、ほとんどは知らないだろう。連載を企画したのは、そのような歴史を知ってもらいたいという点に目的があった。
連載開始早々、「下関は決して忘れることのできない所」(大阪居住の1世の女性)、「掲載された写真にアボジ(父)が載っていると思うので送ってほしい」(福岡居住の2世の男性)などの反響があった。
3世ら若い世代の反響は届いていないが、過去を知ってこそ自分の存在を正しく見ることができ、未来に対する夢と希望を抱くこともできよう。そういった意味で、若い世代こそ正しい歴史認識を持つことが必要ではないか。
私自身3世で、知識、取材不足もあって活字にするのはそう容易なことではない。しかし生まれ変わった「朝鮮新報」、そして年々1世が少なくなるこの時期だからこそ、若い世代に知ってもらいたいと思う。(羅基哲記者)