本の紹介/中小企業新時代 中沢孝夫著(岩波新書)


 「どちらかと言うと中小企業は、『大企業と比べて恵まれていない』とする認識による『善意の誤解』によって取り囲まれている」。 著者のこうした視点が、本書の至るところにちりばめられている。

 レポートの対象は、世界最先端を行く日本のモノ造りを、底辺で支える中小製造業だ。不況、倒産…と暗いイメージを持たれがちなこの世界に分け入り、高い技術力を持つ企業群の強さ、可能性を余す所なく見せている。

 されど、ここで示される生き残りの条件は、示唆的かつ現実的だ。

 成長のための、積極的な技術革新、海外への分工場化。そして「小規模の零細企業ほど将来展望が暗い」「家族を中心とした『3チャン工場』は市場から退出する数が多い」といった現実がそれだ。

 日本産業界の底力の一員であり続けるには、技術集約型の成長路線を行くしかない、との勧告とも読み取れる。(岩波新書・227ページ・税別640円)

 ◇なかざわ・たかお 1944年生まれ。経済評論家