みんなの健康Q&A/糖尿病(2)合併症―網膜症
血管がもろくなり、出血をおこす
しんクリニック 辛浩基院長
Q 糖尿病を放っておくとどうなるのですか。
A 血液中のブドウ糖が高い状態が続くと神経や血管がブドウ糖漬けになり、全身の様々な臓器に障害をもたらします。その結果、全身の細い血管がボロボロになります。このような細い血管の障害は唯一、糖尿病でしか見られないものなのです。主に網膜症、腎症、神経症といった3つの障害を起こし、これらを糖尿病の3大合併症と呼んでいます。糖尿病にかかってから早くて3年〜5年で出現すると言われています。
Q 眼の障害について教えて下さい。
A 眼の奥にある網膜は、形や色を感じ物を見るのにもっとも大切な所です。
高血糖により網膜を走っている細い血管が脆くなり瘤ができたり、つまったりして血液が送れなくなり、血液が漏れ出したりします。血管がつまると、網膜の酸欠状態を解消するために新しい血管が出来ますが、非常に脆くて大出血の原因になります。大出血を起こすと視力が低下し、さらに出血を繰り返していると硝子体という場所に血液が溢れ出て来ます(硝子体出血)。その後、ひきつるようになり網膜が剥離し、失明することもあります。
網膜症の終着駅は失明です。成人の失明原因のトップは糖尿病性網膜症なのです。
Q 網膜症になるとどういう症状が出るのですか。
A 初期にはほとんど症状が出ないことが多く、時に「黒い点」などが眼の前に写ることがあり、これを「飛蚊症(ひぶんしょう)」といいます。このような症状が出て初めて糖尿病が発見される場合もあります。
Q 網膜症にはどうしたらいいのでしょうか。
A 初期には、小さな点状の出血が現れます。これを単純性網膜症といい、血糖をコントロールすることで消失します。しかし非常に脆い新しい血管が網膜に出現した時(増殖性網膜症)には、厳格な血糖コントロールと同時にレーザーによる光凝固療法で進行を抑えることもできます。
Q 糖尿病で白内障にもなると聞いたのですが。
A 眼にはレンズの役割をする水晶体があります。これが濁ってくると、光が網膜に届かなくなり物が見えにくくなります。これが白内障です。白内障は加齢とともに進行し、歳をとるとほとんどの人がかかります。しかし糖尿病では、高血糖により水晶体に糖分が蓄積され濁り出します。このように、若いうちから白内障になり易くなります。糖尿病によって、人よりも10年早く白内障が起こるともいわれます。(次回は合併症―腎症)(東京都大田区西蒲田7−5−11、TEL 03−3738−1112)