女のシネマ/エリザベス
権力が作った女の顔
今が旬のイギリス映画。時は16世紀半ば、異母姉のメアリ1世の後を襲って25歳で即位したエリザベスが側近の裏切り、暗殺未遂など権力を巡る陰謀の中で、恋もし、絶対君主として君臨するまでをサスペンス仕立てにした史劇。
エリザベス一世は、当時ヨーロッパの弱小国だった英国を45年にわたる治世によって一大帝国にのし上げたテューダー王朝最後の女王。暴君ヘンリー8世の娘である。
父のヘンリー8世は、跡継ぎほしさから、エリザベスの母、アン・ブリンと結婚するため、先妻との離婚を認めぬローマ教皇と断絶、英国国教会を設立。結局、アン・ブリンは、エリザベスしか生めず、不義の汚名を着せられ、ヘンリー8世に処刑される。
エリザベスは即位後、新教と旧教の「中道政策」をとり、英国国教会を確立。その「中庸」の治世によって、イギリスは隆盛し、ルネサンスが開花した。
圧巻は何といってもラスト。白塗りの化粧をほどこし、流行最先端の豪華衣装を身につけ、臣下を睥睨(へいげい)、堂々「非婚宣言」するところだろう。
即位直後から側近によって、やかましい位結婚を迫られていたが、女王エリザベスにとって結婚は必要ないもの。政略結婚が当たり前の当時、たとえ女王であろうとも、夫は「主人」となり、国も属国となる。彼女の生い立ちは結婚に幻想を抱かせなかった。
それにしても「げに恐ろしきは権力なり」か。
おどおどしていた王女が、女王になるや絶対君主に変貌するも権力の後盾あってこそ。恋人レスター伯を腐らせてゆくのも権力。このあたり、効果的な照明と衣装を駆使し、ワンショット毎に強い女王の顔が現れてくるのも見もの。イギリス王朝史など紐解くのも、鑑賞の助けになるかも。2時間4分。(鈴)