春夏秋冬


 直接見たことはないが、古代エジプト遺跡に「最近の若い者はなっていない」という落書きがあるそうな。旧世代が新しい世代をなじる風潮は、昔も今も変わらないと言うことだろうか

 ▼子どもだった頃、大きくなっても絶対に自分の目の前にいるような大人にはなりたくない、と思っていた。言い分もきちんと聞かないで、頭ごなしに叱りつけたり、これをするな、あれをするなと言いながら、自分は勝手なことをしている大人にである

 ▼社会に出た頃は、世の中の不条理一つひとつに腹を立てていた。どうして俺の企画案が通らないのか、なぜ自分の祖国へ自由に行けないのか、と。そして、これらの不条理を直してやるんだと気負っていた

 ▼父親になって、子どもの気持ちが分からなくなった。部下を持つようになって、彼らの企画案に戸惑いを覚えるようになった。社会のしがらみを知って、仕方ないな、と諦めるようになった。子どもに親の都合を押しつけ、部下に世の中の秩序を説き、社会の仕組みに個人がいくら頑張っても、と自分で自分を慰めている。いつからだろうか

 ▼4日付本紙8面トップの記事で、2世から4世まで、各界の在日同胞が夢を熱く語ってくれた。ユーラシア大陸横断だとか、アメリカスカップにチャレンジするとか、宇宙語でピアノの発表会を開くとか

 ▼解放直後、在日同胞は、なにをさておいて教育から始めた。そして一つひとつ自分たちの夢を実現してきた。その夢の上で、さらに大きな夢を新世代がはぐくんでいるのだ。「最近の若い者は、なかなか」と、落書きではなく、この紙面に残したい。(元)