生き方エッセ―/障害児を学んでほしい 申桃順
「ア、ヤ、オ、ヨ…」東京朝鮮第4初中級学校1年2組の教室から、元気にウリマルを学ぶ声が聞こえてくる。
7年前に生まれた次男のクァンホが今年からこの学校に通っている。
…
「お子さんはダウン症(注)です」
次男のクァンホが生まれて3日目、医者にそう宣告された。
「心臓に穴があいています。それが、3つも」
これは命がいつまでもつかわからないといった暗示でもあった。
「知能障害もあります。身体的な障害もあります」 ……何度も何度も日本学校に入れるべきか、朝鮮学校に入れるべきか悩み、議論もした。
まだ、話せない子が朝鮮語を学ぶなんてとんでもないと、1年間日本の身障学級に預けた。でもそこではただ単に健常児から引き離されて、隔離されて育っているように思えた。
そんな折、3年になるクァンホの兄の担任から「お兄いちゃんと一緒に、朝鮮学校へ入れてみては」との話があった。
桜の花が咲く頃、1つ年下の同級生と、また1年生として入学式を迎えた。
最近、改めて朝鮮学校に何故入学させたのか、考えてみる。
朝鮮学校で朝鮮語を話せるようになってほしい。それもあるが、一番の願いは、朝鮮の子どもたちの中でクァンホが育つことで、在日朝鮮人社会にも障害を持つ子がいるんだということ、そしてその障害もさまざまだということを知ってほしかった。
知らなかったことで、自分自身とてもひどいことをしたことがある。自分の中でいつもそれは拭いされない記憶として残った。
そして、わが子たちが自分と同じ傷を負わないように、クァンホを通して、クァンホと関わることで色々なことを知って、学んでほしい。だからこそ、朝鮮学校に入れようと決心した。色々なことがあると思う。その都度、色々な体験を通して、障害というもの、障害児というもの、何よりも人間の存在を学んでほしいと思う。
まだ難しいかな?…
……
「ア、ヤ、オ、ヨ…」
元気な大声でまた、ふと我に返った。
オンマを見つけて、一目散にかけてくるわが子の笑顔のすばらしいこと。まさに天使だ。
この笑顔が差別によって曇ることのないように、オンマの大好きなこの同胞社会から差別がなくなることを、心のそこからまた願っていた。
(しん・どすん 東京・足立区在住、ムジゲ会会長)
【注】 染色体異常によって生じるもので、特有の顔貌と知的障害を認め、心臓には先天性心疾患などを合併する。頻度は1000人に1人とされている。