聞いてほしい!倒産の話(1)/「八起会」の野口誠一会長
情報・知識でなく知恵を持て
不況にあえぐ日本経済。この大倒産時代を、若手同胞商工人はどう生き抜くべきか――。倒産問題に関する相談窓口「八起会」の野口誠一会長は、9月14日の東京青商会経営セミナーで、倒産を回避する心構えについて語った。その内容を4回に分けて紹介する。
経営者の目的とは、会社をつぶさないことです。だとしたら、失敗の哲学を学ぶべきです。成功は過去のものです。失敗は未来につながります。
ちっぽけな企業も、一つ当てたら大企業です。誰にでも成功するチャンスはありますよ。ただ、誰にも挫折、失敗は訪れてくるんです。成功と失敗は表裏一体、どこでひっくり返るか分からない。両方とも学ばなければならないんです。
成功の学び方はあくまで情報、知識でしかないんです。あればいいってもんじゃない。情報、知識があるなら、同じくらい知恵がなければいけないんです。情報、知識だけで商売をするから、バランスを崩してつぶれる。知恵のない人が何をしたって失敗するに決まっているんです。自身の欠点に気付く。気付いたら直す努力、ここに知恵が出てきます。思いやり、気配り、この努力が知恵です。
ところが、私たちには思いやりも知恵も、危機感もない。「倒産する1年前に、倒産することに気が付きましたか」という質問に対し、8割以上の答えがノーでした。断崖絶壁でも、まだ気が付かない。自分の会社は絶対につぶれないと思っているからです。そもそも、この辺が甘い。企業は作ったらつぶれるものです。倒産とは常識ですよ。
トップとして、人間として、どう生きるべきか。大体、これが分かっていない。正しい生き方を知らない人に、正しい商売なんかできっこないですよ。
景気のいい時にはいばっている人も、不況になったら平常心でいられますか。イライラする人、くよくよする人、やたら怒る人、こういう人は社長には向かない。経営能力以前の問題です。精神能力を普段から鍛えておかないと、逆境は乗り越えられませんよ。
「八起会」の野口誠一会長
1930年、東京生まれ。日本大学卒。56年に玩具メーカーを設立、年商12億まで成長するが、ドルショックと放漫経営がたたり77年に倒産。翌78年に「八起会」、84年に(株)ノグチプランニング設立。月の半分は各地で講演を行い、テレビ・ラジオ出演や新聞・雑誌での執筆も精力的にこなす。著書に「社長の甘さが会社を潰す」(中経出版社)「修羅場の人間学」(東洋経済新報社)「失敗からの再起術」(大和出版社)など。