ニュースの眼/米の経済制裁一部解除
朝鮮半島政策に変化/関係改善への第1歩
ベルリンで行われた朝米高位級会談の結果を受けてクリントン米大統領が9月17日に発表した対朝鮮経済制裁の一部緩和(別項)は、一言で言うと、テロ支援国の疑いは持っているが、共和国をもはや敵国とは見なさないことを宣言したものだ。一方、共和国外交部スポークスマンも同月24日、制裁措置の解除が敵視政策を止め、関係改善へと進もうとする米国の政治的意志の反映と評価する見解を明らかにした。朝鮮戦争(1950〜53年)以来、敵対関係にあった朝米が、関係改善に向けての第1歩を実際に歩みだしたのだ。これは、朝鮮半島の平和と安全にとって画期的な出来事だと言える。 (元英哲)
敵国通商法の規制緩和/崩壊想定から国交樹立へ
今回、クリントン大統領が発表したのは、議会の承認を得ずに大統領権限で行える措置の一部で、米国内の共和国資産凍結解除などは、大統領権限で可能だが実施されなかった。その点で今回の措置は、共和国側の要求とは隔たりがある。
にもかかわらず、今回の制裁緩和が画期的な意義を持つのは米国が(1)50年来実施してきた共和国敵視政策を転換(敵国通商法の適用除外)し(2)朝米基本合意(94年)の履行を再確認し(3)対朝鮮政策に本腰を入れて取り組みはじめたことを示したからだ。そしてなによりも重要なことは、この政策転換によって朝鮮半島をめぐる構図が、これまでの敵対関係から和解へと転換し始めたこと。
朝米基本合意で米国は、共和国との関係改善、経済制裁の緩和を約束し、マグネサイトの輸入や直通電話の開設など制裁措置の一部を緩和したことがある。しかしこれらは、緩和と言うにはほど遠い内容だった。
基本合意を履行しなかった理由は、火急な核の拡散を防いだことにクリントン政権が満足し、それ以上の外交努力を行おうとしなかったことと、共和国が遠からず崩壊するという認識を持っていたことなどだ。しかし米国の思惑とは別に共和国は崩壊しなかった。そして米国は共和国と正面から向き合わなければならなくなった。
かといって米国が対朝鮮圧殺政策を止めたわけではない。「反テロ及び武器取り引き修正法」による制裁(テロ支援国家指定)は、解除していないし、ミサイル問題で米国は「ミサイル関連技術輸出規制」(MTCR)による統制を最終目的にしている。
またミサイルの次は生物・化学兵器、人権問題、市場経済の導入などを関係改善の条件として米国が持ち出してくるのは必至だ。
その一方で、朝鮮半島の安全保障にとって最大の懸案である停戦協定問題や南朝鮮駐屯米軍の地位、存在に関する協議に米国がこれ以上、背を向けられなくなったことも事実だ。
そしてそれは、朝鮮半島情勢の大きな転換を意味している。
米国の対朝鮮経済制裁措置 「敵国通商法」「反テロ及び武器取り引き修正法」などによって、共和国との貿易や投資、金融取引を禁じたもの。クリントン米大統領が9月17日に発表した緩和措置は(1)共和国製物品と原材料の輸入(2)米国企業の消費財や金融サービスなどの輸出(3)農業、鉱業、石油、木材、セメント、運輸、社会基盤、観光などの分野への投資(4)米国民から共和国国民への送金(5)共和国への米国商船、航空機による貨物輸送(6)米朝間の航空機の商業運航など6項目。