視点
さる14日、ソウル大中央図書館前で12年前に亡くなったある若者の追悼式がしめやかに行われた。若者の名は朴鍾哲君。といっても知らない人も多いだろう。
ソウル大学3年生だった朴君は、学生デモを主導した容疑で治安警察に連行された。警察は黙秘を続ける朴君に対し、1時間20分にもわたって水拷問、電気拷問などを加え死亡させた。
当時の全斗煥軍事独裁政権は拷問に加わった2人の警官を逮捕したが、南の人々の怒りはおさまらず、抗議行動は全土へと拡大した。5月に入り、先に逮捕された2人以外に3人の実行犯がいたことが判明し、全「政権」の「朴君拷問隠蔽工作」が発覚。おりしも、全が「大統領直選制改憲」を拒否する4・13宣言を発表したことで、デモが連日行われていた時期ともあいまって、独裁政権下最大規模の6月民衆抗争へと発展。直選制改憲などを盛り込んだ「6・29宣言」を引き出した。
不当な社会構造を憎み、民衆を主体と認識していた朴君の貴い犠牲で、南の「民主化」は一歩前進した。だが、12年後の今も社会が根本的に変わったとは言えない。金大中「政権」発足後の昨年2〜8月だけでも427人の良心囚が拘束され、うち61.2%が「国家保安法」を適用された。
「国民の政府が出帆したが、息子が夢に描いた世の中はいまだに来ていません」。朴君の父、正基氏(71)の追悼式でのこの嘆きが現状を言い表している。(聖)