sinboj_hedline.gif (1986 バイト)

時事・解説/米国防長官の日本、南朝鮮 訪問


軍産複合体の利益追求/ガイドライン関連法案の早期成立へ圧力

 コーエン米国防長官が日本(11〜14日)と南朝鮮(14〜16日)を訪問し、軍部をはじめとする当局高官らと相次いで会談した。その目的は米・日・南朝鮮による軍事同盟を再確認し、米国が経済などの面で国益を得るところにあった。

 

6年間に国防費1100億ドル増加

 南朝鮮を訪問したコーエン長官は15日、千容宅国防相と第30回米・南朝鮮定例安保協議を行った。米国は協議後の共同声明を通じて、共和国の「ミサイル発射」による情勢緊迫化を強調しながら、@朝鮮半島有事の際の米軍支援部隊の早期展開A生物・化学兵器対策の充実B米・南朝鮮合同軍事演習による即応力強化――などの方針を発表した。

 言い換えれば、昨年8月の共和国の人工衛星打ち上げを口実に、朝鮮半島有事に備え能力を強化するために軍費拡大を図ったのだ。

 これに先立ちコーエン長官は日本で、野中官房長官、野呂田防衛庁長官と13日に会談し、「TMD(戦域ミサイル防衛)開発・配備の2、3年前倒しの方針表明に加え、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)関連法案の早期成立を日本側に改めて要請」(読売新聞16日付)した。

 TMD構想について日本はすでに、共和国の人工衛星打ち上げを「弾道ミサイル発射」と言い張りながら、昨年末までに日米共同技術研究への着手を決めている。そのため米国がTMD開発・配備を予定より早めることで、数百億ドルと言われる費用投資を加速化させることにその目的があったと言える。さらに言えば、日本は情報収集衛星の2002年導入を決定しているが、米国はすでに日本の情報収集衛星導入を積極的に後押ししていく方針でもある。

 こうした一連の動きを後押ししているのは、クリントン政権が冷戦終了後から削減を続けてきた国防費を、今年になって2000会計年度(1999年10月〜2000年9月)から2005年までの6年間に計1100億ドルを増加させる方針を決めたことがある。増額分は米軍の有事即応態勢の強化などに充てる方針だ。

 こうして見ると、コーエン長官の南朝鮮・日本訪問の目的は、「米軍需産業複合体の好景気を求めるため」であり、とくに日本に対しては「日本の衛星開発とTMD体制樹立について米国に追従するようにするため」(10日発朝鮮中央通信)だったと言える。

 

自自連立による初の国会前に

 コーエン長官は日本で、ガイドライン関連法案の早期成立も求めた。

 ガイドライン関連法案は、日米が97年9月に合意したガイドラインを実行するための関連法案で、周辺事態法案、自衛隊法改正案、日米物品役務相互提供協定(ACSA)改定案の3本からなる。98年4月に国会に提出されたが、7月、11月召集の臨時国会では実質審議が行われず越年した。米国は早期成立を求めており、小渕首相が自民、自由両党の連立に踏み切ったことで実現へとよりいっそう近付くものとなろう。

 19日からは自自連立政権が発足して最初の国会となる通常国会が召集されるが、それを前にコーエン長官が日本を訪れたのは決して偶然ではない。野中長官は関連法案の成立についてコーエン長官に、「次期国会での早期成立に最善を尽くしたい」と述べた。

 一方、野党である民主党の菅、公明党の神崎両代表も、朝鮮半島有事の際の対米軍後方支援について「日本が直接的な脅威を受ける場合、ある程度のサポートはありうる」(読売新聞14日付)と、容認の姿勢を見せ始めた。

 また米国からはコーエン長官のほかボドナー国防次官も訪日し、自民党の山崎前政調会長と12日に都内で会談したが、山崎氏は19日召集の通常国会で衆院に設置される特別委員会委員長に任命されている。ガイドライン関連法案審議の今国会成立に対する米国の圧力が強まったことは言うまでもない。