本の紹介/戦時・性暴力をどう裁くか(国連マクドゥーガル報告全訳)
第50回期国連人権小委員会差別防止・少数者保護小委員会(小委員会)に提出された最終報告書の全訳本だ。
同報告書を作成したゲイ・J・マクドゥーガル女史は1996年、同小委員会の委員に任命され、その翌年「武力紛争下の組織的強姦、性奴隷制および奴隷制類似慣行」特別報告者に任命され、98年に同報告書を提出した。
同報告書が作成されることになったきっかけの1つは、90年代に入り「慰安婦」問題に対する国際的な関心が高まりをみせたことがあげられる。92年、国連小委員会に日本軍性奴隷制(慰安婦制度)について調査をしてほしいと、国際NGOから強い要望があり、94年にリンダ・チャベス委員を「戦時奴隷制」特別報告者に任命した後、マクドゥーガル委員に替わり同報告書が作成された。
報告書は日本政府に刑事責任追及の義務があることを強調し、国際条約違反で被害を与えた「慰安婦」個人に損害賠償を支払う義務があるとして、「第2次大戦時には強姦と奴隷化という国際犯罪は国際慣習法で禁止されていなかった」などという日本政府の主張に真っ向から反論を加え詳しく論駁している。
同報告書が全訳され出版されることの意義は大きい。
【1200円、凱風社、東京都文京区後楽2−2−15、TEL 03−3815−7633】