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民族教育への差別是正問題、国連で討議へ/報告書も提出


 スイス・ジュネーブで開かれている第50会期国連人権小委員会の差別防止・少数者保護小委員会は12日、在日朝鮮人の教育差別問題について、「朝鮮語で教育を受けた子供は、国立大の受験資格がない」と指摘、同委員会として初めて問題の存在を認める報告書を提出した。18日には討議が行われ、在日本朝鮮人人権協会、在日本朝鮮人留学生同盟、兵庫県外国人学校協議会の各代表がそれぞれ発言。朝鮮学校をはじめ外国人学校の置かれた差別状況を知らせ、日本政府が処遇を改善するよう促すことを強く呼びかけた。報告書は28日に決議される予定。

 

人権協会、留学同、兵庫県外国人学校協議会 代表ら訴え

 報告書は少数者保護作業部会が作成したもの。「民族的、宗教的、言語的少数者の権利についての評価」の事実認定部分で、@日本に住む朝鮮民族は日本語での教育と、日本語の教科書での日本史教育を要求されている A朝鮮民族の子弟が朝鮮語で教育を受けたり外国人学校で教育を受けた場合は国立大入試を受けることができない―と認定した。

 これは5月の作業部会に参加した教職同、留学同代表の発言と情報が盛り込まれた内容だ。また小委員会で朝鮮学校問題に関する発言が行われたのも今回が初めてで、こうした国連側の対応は、民族教育差別問題への関心の高さと、是正への支持と共感の表れと言える。とくに今会議は去る6月、子どもの権利委員会が日本政府に朝鮮学校の差別状況を全面的に調査、解消するよう勧告した以後、初めての国連会議でもあり注目を集めた。

 討議で発言した人権協会の韓明錫副会長は、朝鮮学校を「1条校として認可すべきでない」とする1965年文部次官通達の問題点を指摘し、日本政府の一貫した差別政策により、朝高卒業生は国立大学入学資格が認められないばかりか、教育補助も実施されず父母らは大きな経済的負担を負っていると説明。そして、子どもの権利委員会勧告後も何ら改善策を取ろうとしない日本政府の姿勢を批判した。

 兵庫県外国人学校協議会の代表は、県下の外国人学校には米国、英国、ドイツ、中国、朝鮮、「韓国」など50数ヵ国の国籍を持つ4000人が通っているが、日本政府が正規の学校と認めないため、外国人学校はあらゆる資格、補助を全面的に否定されていると指摘した。これに対し、米国の日本人学校は私立学校の資格が与えられ、卒業生の大学受験資格も認められている実例をあげ、日本の閉鎖性を批判。さらに日本政府の対応は、日本が批准した国際人権規約、子どもの権利条約に違反しているとして、国連・人権高等弁務官と人権小委員会の特別報告者による調査を要請した。

 留学同を代表して発言した洪順姫さん(名古屋大学工学部4年、愛知朝高卒)は、朝高に通いながら日本の通信制高校にも通い大学入学資格検定(大検)で国立大の受験資格を得た自身の経験に言及。「自己の民族の文化を維持継承する権利は、すべての人々に保証されなければならない不可侵の権利だ。自己の尊厳を傷つけられず自由に夢を叶えることのできる日が、1日も早く訪れることを強く願っている」と述べ、小委員会の対応を求めた。

 報告書が小委員会で採択されれば、人権委員会、国連総会に送付される。