日高生サマースクール 京都・滋賀ブロック
日本学校に通う同胞中・高校生のためのサマースクールが関東・東北、中四国・九州、東海・北信に続き、9〜11日に北海道、10〜12日に大阪・奈良・和歌山、11〜13日に京都・滋賀の各ブロックで行われた(26〜28日に兵庫)。日校生55人が参加、「オイデヨ、ジブンサガシ」をテーマに初の試みとして歴史探訪も盛り込み、兵庫県養父郡で開かれた京都・滋賀ブロックに同行した。(東)
本名で呼びあい
今年の京都・滋賀ブロックの特徴は、半数近くが中学生のうえ、初めて参加する日校生が半数以上いることだ。全日程は、在日朝鮮人の過去と現在を知り、その事実と向き合い、受け入れるための「自分探し」をテーマに練られていた。
ポイントは、@在日同胞のルーツを探り未来を考える歴史探訪と講義A伝統文化に触れるオープニングセレモニーと民族体験コーナーB「自分」をさらけ出して思い切り主張するアピールタイム――だ。この間の生活は5〜6人ごとの班が基本で、各班に学生会OBや朝青の指導員が2〜3人ずつ入る。夜には班別に感想を話し合う場があり、運動会やバーベキュー、フォークダンス、クイズ大会などの交流行事も数多く設けられた。もちろん、本名で呼び合うのがルールだ。
強制連行の現場へ
初日の歴史探訪で訪れたのは、日本有数の鉱山だった兵庫県朝来郡の生野銀山。1939〜44年の間に660人以上の朝鮮人が強制連行され過酷な労働を強いられた。真っ暗で寒い坑内で行われる銀の採掘は手作業で、与えられる食事もわずか。耐えかねて脱走を図り、連れ戻された人も多かったという。
翌日の講義では、在日同胞の歴史と現状を、カギとなる年代と数字をあげて説明。分かりやすいと好評で、初めて参加した柳真愉さん(高2、京都)も「8月15日が終戦の日ではなく解放の日だということに驚いた。もっと知らなくては」と真剣な表情だった。
初日の夜に行われたオープニングセレモニーは、京都朝鮮歌舞団の歌と踊り、朝青京都府本部による檀君神話をモチーフにした寸劇、日本国際テコンドー協会副師範らによるテコンドーの演武など、民族文化を満喫できる内容だった。2日目午前の民族体験コーナーでは @打楽器演奏 A民俗遊戯 B朝鮮料理 Cチョゴリ試着――を全員が体験。初参加の金孝道くん(高3、滋賀)は「チョゴリが気に入った。素晴らしい文化を持つ自分の国を誇りに思うようになった」と話した。
本音で話せる
ほとんどが初対面どうし。でもすぐに打ち解けた日校生たち。2日目午後の班対抗運動会では各班が、前日に出会ったばかりとは思えぬ団結力を発揮した。
みなが口々に「ここでは本音で話せる」と言っていた。朝鮮人ばかりのこの場では「朝鮮人であること(のマイナス感)」を気にしないでいい。逆に言えば、日本人の間にいまだ差別意識や理解不足があることの裏返しでもある。「日本の友達とは浅い付き合いになってしまう。朝鮮人であることを打ち明けようと思っても、ひとごとのようにあしらわれてしまう」(金希和さん、中2、京都)。
こうした日校生の思いが凝縮されていたのが、キャンプファイヤーを囲んでのアピールタイムだった。フォークダンスで盛り上がった後、日校生たちは次々と壇上に上がって思いを語り、「朝鮮人でよかった!」、「チョソンサラムのトンム最高!」と叫んでいた。
始まったばかり
初参加の林一明くん(中3、京都)は「周りの友達が朝鮮人というだけでなぜかうれしかった。本名で学校に行っている人もいたが、すごくかっこいい。僕もできれば本名で行きたい」と話した。
同様の感想は多く聞かれたが、サマースクールはきっかけに過ぎない。白千彰さん(高2、京都)が「これからも朝鮮人としての自分を探し続けたい」と言うように、日校生たちの「自分探し」は始まったばかりだ。
そのための場が日校在学朝鮮人学生会。ここでは日校生たちが民族意識を育もうと、朝青の協力を得ながら活動している。
「色々な行事を通じ、やっぱり私は朝鮮人だと胸を熱くした。この気持を一時の感動だけで終わらせたくないので、学生会に入ってこれからも頑張りたい。そして1人でも多くの日校生に私の感じたのと同じ喜びを伝えたい」(朴映葉さん、中3、京都)。