視点
ある在日2世の女性から聞いた話だ。
1945年8月15日、彼女は農家の庭さきで遊んでいた。その農家の開け放たれた座敷で、彼女のオモニは日本人に混じってラジオから流れる「玉音放送」を聞いていた。あちこちで日本人たちのすすり泣く声が聞こえた。その時、オモニは無表情で立ち上がると、そっと座敷を抜け出し、彼女と妹の手をつないで早足で自宅に向かった。
そして自宅を目前にした瞬間、オモニは急にククッと忍び笑いを始めたのだ。気でも違ったのかと不安気な表情の娘たちを前にとうとう声をたてて笑い出した。「ヘバンテッタ(解放された)」「ヘバンテッタ」と何度もつぶやきながら…。家にあがるや手拍子を打ちながら踊り出したオモニは、最後には声を張り上げて泣きだした。
彼女の一家は解放された祖国に帰るべく、全財産をはたいて船を購入したが、その船が沈没してしまい、帰国は事実上無期延期となった。
それから53年。当時7歳だった彼女も還暦を迎えた。だが外勢によってもたらされた祖国の分断は今も続いている。
14、15の両日、祖国解放53周年に際して板門店では南北、海外の代表が集い「民族の和解と団結、統一のための大祭典」が開かれる。
何故、祖国解放の日に統一のセレモニーを開くのか。そこには解放とともにやってきた分断の悲劇に終止符を打ちたいとの民族の強い願いが込められている。(聖)