時事・解説//南朝鮮 銀行整理の影響
「大量失業時代」目の前に/労使間に協議なく大多数が不当解雇へ
深刻な通貨・金融危機が続く南朝鮮で、金融監督委員会から「退出企業」(整理対象企業)に指定された都市・地方銀行5行の行員らが、大規模な抗議運動を連日展開している。彼らは、今回の措置は雇用問題への影響が大きいとして、他行との強制合併に反発。合併に伴う失業者への退職金支給や再就職先保障などを強く訴えている。(根)
人員整理を「合理化」
退出銀行に指定されたのは、都市銀行の大東、同和、東南、地方銀行の京畿、忠清。金融監督委によると、これらは自己資本比率が国際決済銀行(BIS)基準の8%に達しておらず、経営不振が著しいことから、自己再建は不可能と判断したという。5行は都市銀行の国民、新韓、住宅、韓美、ハナに吸収合併される。
この措置について、南朝鮮では「金融ビッグバンの幕が上がった」(京郷新聞6月29日付)などと指摘するが、構造調整の影で最も深刻なのは合併に伴う大量の失業者の発生だ。
南朝鮮統計庁は6月23日、5月末現在で失業率6.9%、失業者数149万人と発表したが、南朝鮮最大の労働組合「韓国労働組合総連盟」(「韓国労総」)は翌24日、失業率は当局発表をはるかに上回る16%以上、失業者数も賃金未払いの労働者など「事実上の失業者」を含めて365万人に達するとの試算を明らかにした。
5行は「政府」の主導によって強制合併されるが、その際に整理解雇制を適用することで人員整理が「合法的」に行われ、職員の大部分が職を失う。整理解雇制では失業者の退職金支給や再就職は保障されていない。マスコミも、「ついに大量失業が目の前に迫ってきた」(京郷新聞1日付)と警鐘を鳴らす。
さらに、今回の措置は労使政3者の話し合いがまったくないまま断行された。南朝鮮では労使政委員会が発足し、整理解雇の問題は労使政3者の協議の上で対処する取り決めとなったが、今回はそうしたプロセスが無視され、労働者の権利が一方的に踏みにじられた形となった。
労組「生存権死守を」
退出銀行の職員らは、合併措置は労働者を「解雇対象」としか見なさない不当なものだとして、「生存権死守」を強く訴えている。
大東銀行の労働組合は6月29日、ソウルの明洞聖堂でろう城闘争に突入。「(強制合併に対して)このまま引き下がるわけには行かない。一方的な整理には断固反対する」との姿勢を見せている。
ろう城には後に全国民主労働組合総連盟(民主労総)と「韓国労総」の2大労組が合流し、翌30日には同和銀行の労組も加わった。参加者は約1400人に達し、現在も続行中だ。
忠清銀行では29日に500人が「銀行死守決意大会」を開いたほか、京畿銀行でも同日、全行員が出勤を拒否し、抗議の姿勢を示した。
このほか、5行すべてで行員が業務続行を拒否し、コンピューターが麻痺状態に陥った。
一方、民主労総は28日、声明を発表し、合併先の銀行に対して、整理対象銀行の職員を全員雇用するよう強く要求。民主労総傘下の民主金融労連、「韓国労総」傘下の全国金融労連の両労組は30日、不当解雇を招く今回の措置を撤回しない場合、今月15日からゼネストに突入すると宣言しており、予断を許さない状況と言えよう。
「失業者の権利保障を」/相次ぐ抗議のゼネスト
南朝鮮の労働者は一様に、不当解雇の全面撤廃と、退職金支給や再就職先保障など、失業者に対する十分な権利保障を強く求めている。
そんな中、銀行以上に労組側のたたかいが激しさを増しているのが、業界最大手の現代自動車だ。
同社は大企業としては初めて、人員削減に整理解雇制を適用し、4月に3699人を解雇。5月19日には8189人の解雇と、労働時間の短縮による賃金削減の方針を労組側に通告した。これに労組側は「労働者のみに苦痛を強いる措置」と猛反発した。
この方針は一時撤回されたものの、6月29日には会社側が再び、4830人の解雇を発表、30日に受理された。労組側は非常対策委員会を開き、「解雇回避のための協議のさなか、会社側が一方的に解雇を進めるのは絶対に受け入れられない」と抗議。労組員約3万2000人の参加のもと、現在もゼネストを続行中だ。
一方、職制改編に関する労使交渉が決裂した釜山市の地下鉄、釜山交通公団の労組は3日、経営側の大規摸な人員削減計画に反対し、労働条件の改善を求めるゼネストに突入。労組員500人が線路上でデモを強行。民主労総傘下の全国保健医療産業労働組合も23日、ソウル大学病院で会見し、「賃金の凍結・削減、人員整理などの方針が労組を圧迫している」として、労働条件が改善されない場合はゼネストも辞さない構えを見せている。