奉仕する総聯/同胞のために何をするか―18全大会報告から―(下)
生活・権利
多様で複雑な問題に対応/「経済」「高齢者」など積極取り組み
21世紀を前に、在日同胞社会は世代交替という構造的変化とともに、経済情勢などの客観的条件の劇的な変化に見舞われている。総聯は第18回全体大会報告で、こうした変化を踏まえた上で、同胞の生活・権利を守る上での課題を示した。これは総聯が今後、多様で複雑な問題にいっそう積極的に取り組んでいくことを改めて宣言したものと言える。
同胞企業をサポート
大会報告は同胞の生活向上と権利拡大に向けての課題として、まず「経済」を挙げた。
周知のとおり、日本経済はどん底だ。経済企画庁の発表によれば、1997年度の国内総生産は前年より実質0.7%減った。日本経済が年度でマイナス成長になったのは第1次石油危機以来、23年ぶりで、第2次世界大戦での敗戦後、最悪の事態となった。諸改革の断行で回復の見通しを立てるだけでも、数年から10年を要するとされる閉塞状況の中、同胞の企業活動も形容し難い困難に直面している。
大会報告はこうした環境の中で、同胞の生活を守るために全力を傾けて行くことを明らかにした。
まず、同胞企業と関わりの深い業界の動向と情報を提供する「同胞経済情報センター」の設立、「全機関的な経営活動協力システム」の確立をもって、同胞企業をサポートしていく方針を打ち出した。
これと関連して、商工会は昨年に好評を博した朝鮮料理店経営集中講座などで実績を築いて来た同胞飲食業者協議会の経験を生かし、業種別の取り組みを活発化させる必要があると指摘。朝鮮商工新聞のいっそうの経済専門紙化を図ること、経理室を強化して経理、経営診断、税務面での能力向上を方針としてあげた。
また日本の金融情勢の複雑化を受けて、朝銀を通じて同胞らの相互扶助を実現して行く展望のもとに、朝銀を守るための運動の強化をうたった。同様に、助け合いを通して同胞らの財産を守る金剛保険についても強調した。
次に報告では、給与所得者層の同胞を対象にした活動についても触れた。
給与所得者、つまりサラリーマンは同胞社会で年々増え続けており、70年代中頃に14%前後だったのが、現在では30%に達したと言われている。これは、この層の同胞らが受ける様々な生活上の影響が、在日朝鮮人運動にも直接的に反映されることを意味する。
当面は不況とのからみから、大きな雇用不安の恐れがあることを踏まえ、就労における民族差別への反対、同胞の就業問題と同胞企業の人材確保といった問題を解決するための就職情報の提供、斡旋事業を推進していく。
差別行政の是正要求
権利擁護においては、日本政府に対し引き続き、「未解決のまま残っている諸権利を保障する制度的、行政的措置を取るよう強く求めて行く」。
中でもこの6月から、在日同胞社会に構造的な影響を与えかねない南朝鮮の改正「国籍法」が施行されていることから、日本政府がこれを在日同胞に対し不正に適用するなどの状況が起きれば、「1件1件、断固として糾弾、粉砕していく」との立場を強調した。
同胞人口に占める65歳以上の高齢者の割合は、73年の約4.2%から95年には約10.4%に増えており、21世紀の早い時期には日本社会と同様に、4人に1人が高齢者という超高齢化時代を迎えると思われる。報告では「同胞高齢者のための各種施設を運営し、今後実施される介護保険法をはじめとした日本の高齢者保健福祉制度の差別なき適用と活用のため、積極的に活動する」と明らかにした。
こうした活動は、民主主義的民族権利を守るために一生涯、心血を注いで来た1世ら同胞年長者に対し、同胞社会のこれからを担う世代が、果たすべき道徳的な義理でもある。
報告では、同胞障害者に対しても深い関心を寄せるとしている。最近では、障害児を持つ同胞たち独自の活動が知られるようになったが、報告は、組織がこうしたところにも便宜をはかるために尽力することを示したものだ。
総聯では各地に生活相談所を設置。在日朝鮮人人権協会を介して弁護士、司法書士など、同胞や日本人の専門家の協力を募り、総聯支部などで定期的に「無料法律生活相談」を実施、好評を博した。
報告では、同胞たちの各相談所へのアクセス方法をより簡易にするとしている。これは、総聯が同胞の中にいっそう深く根差し、多様で複雑な問題に常に対応していこうという姿勢の表れだ。(賢)