日朝国交正常化へのアプローチ/各県から訪朝団
水害支援通じて友好の輪広げる
「こんな時だから民間交流が必要。政府の重い腰を上げさせるには、何故国交がないのか、という一般の人たちの声を少しでも大きくしていくことだ」。訪朝した人たちは口々に言う。両国関係が進展しない状況下で1月から5月まで、29団体、約250人が共和国との友好親善、水害支援などを目的に訪朝した。神奈川、静岡、長野県の各訪朝団の団長らに聞いた。(嶺)
建設現場に軍人
日朝友好促進神奈川県議会議員連盟第5次訪朝団は自民党を除く各党派で組織され、団長で社民党の斉藤正議員以外は全員初めての訪朝だった。
5年ぶりの訪朝となる斉藤議員は、「今回の訪朝は、友好が第一だったが、水害に対するお見舞いもあった。日本である程度状況を聞いていて、かなり暗いイメージを持っていったが、人々の表情はわりと明るかった。しかし、エネルギー事情が悪いのか、ホテルは暗く、夜もネオンをあまり見なかった」と語った。
訪朝団をこの時期に組織したことについて「とにかく行ってみる。それから感じたことを整理して、今後の日朝関係に反映していければいい」という意見がまとまったからだ。
共和国に対して「全員、身近に感じて帰ってきた。それがまず大事だ。何よりもこの国の前提は平和だということも実感した。妙香山に行く途中、あちこちで軍人が建設現場で働いている姿を見た。日本の植民地から朝鮮戦争を経験しているだけに平和あっての国であり、建設だということを十分知っていると思う。そういった国作りを目指してきたのではないか」と語る。
訪朝期間、一行は出発前に希望していた東京都出身の在朝日本人女性、村上尚子さん(74)、神奈川県横浜市出身の小林久子さん(67)と面会した。村上さんは、在日朝鮮人の夫と共に38年前に共和国に渡った。
「村上さんは、今年1月の日本人妻故郷訪問第2陣の名簿に入っていたが、日本国籍離脱者ということで、直前で外された。今後2人が里帰りできるかは、不透明だが、何とか実現させたい」と言いながら、政府間の交渉の促進とは別に、地方でできることはしていきたいと斉藤議員は強調する。
子供たちの目
「土がやせていた。粘りがないというか、密植も気になったし、肥料も十分でない」。日朝友好静岡県民会議代表団の菊田昭団長は言う。5月18日から25日まで市民を含めた県下の24人が名古屋から直行便で訪朝した。
滞在中、妙香山に行く途中の沢岩農場で全員が田植えを経験。菊田団長は「1本、2本ずつじゃ枯れてしまうから、3本位まとめて植えると説明された。水害被害の実態はかなり厳しかった」と感想を語った。
6年前の訪朝時は、日朝の国交正常化と南北の統一気運が高まっていた時期だった、と振り返りながら、国交交渉で進展がないのは、過去の清算をしようとしないから、その責任は日本側にあると菊田団長は強調する。
静岡の代表団より少し前に訪朝し、95年の水害直後から県をあげて共和国への水害支援をしてきた長野県の「朝鮮大水害被災者を支援する長野県の会」代表団の清水勇団長は、「今回共和国から特に長野県の支援に対して、苦しい時の1粒の米は、未来の大きな蕾になると言われた。共和国への逆風が吹く中でそれに負けず、各界各層の人たちと一つになって、とにかく支援を続けることにしている」と言う。
「訪朝団5人が、物資を届けた平壌市内の蒼光幼稚園に寄った際、先生から私たちのことを聞いて子供たちが、抱きついてきた。その目を忘れられない」と清水団長は言う。
こうした支援が、ひいては国交正常化への大きな輪に広がっていくことを願ってやまないと強調していた。