続・高麗青磁への誘い10選 申載天H/青磁象嵌菊花文上杯
器形は広い口からふっくらした曲線を描いて尖底に至る、いわゆる独楽(こま)に似て、均衡のよくとれた安定した姿を呈している。
口辺には白象嵌で雷文帯をめぐらし、胴の三方に菊文枝の丸文があり、その間に巡らされているやや太く、そして細くして軽妙な白象嵌の唐草文様の美しさが心にしみる。清澄な淡緑色の美しい青磁釉がむらなく施され、全面に細かいひびが入っている。
このような形の杯は昔、武人が出陣に際し馬上で酒を酌み、地上に投げつけたといういわれから馬上杯と呼ばれたと伝えられている。
この作品は品のある器形といい、優れた象嵌文様といい美しい釉色の肌といい、優雅で高麗青磁馬上杯中まれに見る優品であると思われる。(12世紀、高さ10p)